土居志央梨、『虎に翼』は「思い出すたびに勇気をもらえる作品」 “運命の役”よねを演じて

土居志央梨、『虎に翼』運命の役よねを演じて

 NHK連続テレビ小説『虎に翼』で、男装の弁護士・山田よね役を演じる土居志央梨。夫主人公・寅子(伊藤沙莉)との関係性や、相棒・轟(戸塚純貴)との絆、大学の同期である上川周作との共演、男装姿への戸惑いと慣れ……そして、本作が自身のキャリアに与えた影などについて、じっくりと語ってもらった。

最初の頃は男装に「これ私大丈夫かな」って

――出演が決まったときのお気持ちは?

土居志央梨(以下、土居):伊藤沙莉ちゃんが主演を務めるというニュースを見て、「絶対に観よう」と決めていたドラマだったので、「まさか」という感じでした。すごくびっくりして、台本をもらうまでは信じられなかったです。でも本当に嬉しかったですし、家族がとても喜んでくれて。あとは今回、直道役の上川周作と共演するということで、大学の仲間もすごく喜んでくれました。

――上川さんとは大学の同期だそうですね。出演決定以降、どのタイミングでお会いしたんですか?

土居:衣装合わせの少し前だったと思います。最初はキャスト表に“上川周作”と書かれているのを見て、「これって本当にあの上川周作かな?」って(笑)。それで本人に連絡をしたら、「決まったよ」と言われて、「こんなことが人生であるんだね」と感慨に浸りました。でも、現場で初めて会ったときには、変な気持ちすぎてあまりちゃんと話せなかったんです(笑)。大学生の頃は2人でいても本当にふざけてばかりだったので、状況が違いすぎて……なので、(上川の)撮影が終わってからいろいろと話しました。

 
 
 
 
 
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――あらためて、山田よね役のオファーを受けた際の感想も聞かせてください。

土居:まだ台本が来る前に“男装姿の女性”ということだけは聞いていて、「一体どういう人なんだろう?」とすごく興味が湧きました。ただ、今まではフェミニンな女性らしい役を演じる機会が多かったので、「果たして自分にできるんだろうか」という不安はありました。

――その不安をどう乗り越えたのでしょうか?

土居:台本を読んで「つらい過去を頑張って乗り越えようとしている人なんだ」とわかって、よねのことが理解できました。すごく魅力的な人だなと思えたので、そこからよねとの距離がグッと縮まりましたね。やっぱり吉田(恵里香)さんが描かれる台本の力と、あとは髪を切ったことが大きかったかなと思います。

――朝ドラは『おちょやん』に次いで2作目。今回も同じく梛川善郎監督がチーフ演出を務められていますが、監督から「よねをこう演じてほしい」といったオーダーはありましたか?

土居:よねについての話はしましたけど、「こう演じてくれ」というオーダーはなかったので、それだけ「ちゃんと自分でやれよ」ということかなと思っていました(笑)。とにかく大事なのは、“子どもの頃からのよねをちゃんと埋めていくこと”だと思ったので、そのあたりを考えながら。あとは、よねの幼少期時代を演じてくださった早瀬(憩)さんたちのお芝居を見て参考にした部分もあります。

――ちなみに、起用理由などは聞いていますか?

土居:特に言われていなくて、私もなんとなく聞かないようにしていたんです(笑)。でも、聞いてみたら、「少し外側に立って、みんなを冷静に見ている感じがよねだと思った」と言って下さって、それは自分でも意外でした。

――実際に男装されてみて、ご感想はいかがですか?

土居:最初の衣装合わせのときにはまだ髪を切っていなくて、ショートヘアのカツラで合わせたんですよ。でも、そのカツラがあまりにも似合っていなくて、「これ私大丈夫かな」って(笑)。本当にコントみたいだったので、これで1年間やっていけるかなと思いましたけど、実際に髪を切ってからは自分でもすごくしっくりきましたし、今はスーツ姿の自分の方が見慣れています。役作りとしては、よねはずっとスーツ姿で生きてきた人なので、ポケットに手を入れたりするのも、取って付けた動作に見えないように。慣れ親しんだ仕草に見えるように、というところは意識しています。

――日常生活で、そういった仕草が出るようなことも?

土居:そうですね。たぶん、現場に来るときにはスカートを1回も履いていないんじゃないかなと。あまりそういう気持ちにならないので、きっと染み付いているんだと思います。

――声もかなり下げて演じられていますよね?

土居:とにかく意志の宿った声というか、力強い声が似合うなと思っていたので、家で喋りながら(声の高さを)探りました。新潟編のときには撮影が空いたので、その後、久しぶりに演じたらチューニングがよくわからなくなっちゃって(笑)。低すぎて悪魔みたいな声になってしまうこともあったので、監督に意見を聞いたり、沙莉ちゃんに「今の大丈夫だったかな?」と相談しながらやっています。

――(笑)。これまで演じられてきて、よねという役柄や、寅子との関係をどう捉えていますか?

土居:よねがトラちゃんや周りの女子部のみんなと違うのは、やっぱり恵まれない生い立ちがあって、すごくつらい過去を持っているところだと思います。つらい過去はそれぞれにあるけれど、“持たざる者である”というのは明らかに違うところで。「持たざる者の逆襲」じゃないですけど、よねには懸命に時代を這い上がっていく強さがあると思っています。それに、トラちゃんに対してキツいこともたくさん言うけれど、私は愛情表現だと思っているんです。学生時代から、よねが何度「鬱陶しい、鬱陶しい」と言っても、トラちゃんが「よねさん、よねさん」と来るのが仲良しの証拠ですし、戦後に再会してからも基本的なところは変わっていないなと思っています。

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