仲村トオル、演じることは「ゴールのない旅」 『密告うたう2』能馬役で大切にした“重さ”

仲村トオル、演技の感覚は“ゴールのない旅”

 松岡昌宏が主演を務める『連続ドラマW 密告はうたう2 警視庁監察ファイル』が、WOWOWで放送・配信中だ。

 「警察の中の警察」警視庁人事一課(通称:ジンイチ)を舞台にした本作は、シリーズ2作目にして、佐良正輝(松岡昌宏)が、特殊詐欺捜査情報漏洩事案の指揮を執る。佐良たちは調査をするなかで、警察組織の陰謀や、後輩刑事・斎藤康太(戸塚祥太)の殉職事件の核心に迫って……。

 今回、佐良の上司で監察官の能馬慶一郎を演じる仲村トオルにインタビューを行った。ジンイチ内で「能面の能馬」と恐れられる彼の人物像や、佐良との関係性、さらには、仲村が長らく携わってきたWOWOW作品について、演技と向き合っての想いなども語ってくれた。

意識していたのは、能馬らしいセリフの“間”

ーーシーズン1は2021年に放送・配信されました。能馬を演じるなかで感じた手応えや、撮影時のエピソードがあれば教えてください。

仲村:さまざまな事情があって、僕は全6話の能馬の登場シーンを3日で撮ったんです。余計なことを考える暇がなかったので、結果的に能馬というキャラクターの背景が見えない方向にうまく作用したのかも知れません。「何を考えているのかがまったく見えないのは、そこに何もないからだ」という状態に映ったのかなと。

ーー仲村さんは、警視庁内部でも恐れられている能馬について、どんな人物だと感じていますか?

仲村:任されている仕事に対する使命感や社会的な正義感みたいなものを強く持っている一方、「清濁併せ呑む」の濁った方・汚いものに蓋をした組織の中の人間でもある、と自覚していると思うんですよね。

ーーなるほど。

仲村:パンドラの箱を開けて汚いものが明らかになったとき、市民の間で警察組織への不信感が高まるが、それは警察にとっても市民にとってもいいことなのか? 治安を守る人たちが信用できなくなると、捜査にも協力してくれないし、犯罪も増えてしまう……。そうしたことを鑑みて、「組織として開けないんだったら自分も開けない」、「パンドラの箱を開ける方が悪循環になるなら開けない」と判断をしていると思うんです。ただただ真っ白な正義感を持っている人ではないような気がします。

ーーシーズン2では能馬や須賀透(池田鉄洋)の過去が明らかになるそうですね。仲村さんは能馬の過去に触れたとき、どんな印象を持ちましたか?

仲村:「重いな」と思いましたね。佐良たちもですが、登場人物みんな重い過去を背負っている。客観的に見ると、これだけ重い過去を背負った人たちが揃う部署も珍しいですが、「この重さ、いいんじゃないかな」と思います。

ーーそんな能馬は表情の変化がほとんどない役です。彼の威圧感を出すために意識しているところはありますか?

仲村:シーズン1、つまり最初に能間のキャラクター設計をするとき、メガネをかけ、前髪を厚めに下ろして表情や目の色を見えにくく、としたのは、内片輝監督のアイデアです。シーズン2の能馬のファーストシーンでは、彼が書類を書いている部屋に、佐良と皆口菜子(泉里香)が入ってくるのですが、そこで監督は「最初の一言を言うまでの時間、もっと空けていいです」と。

ーーたしかに、能馬らしいセリフの“間”でした。

仲村:いざやってみて「なるほど」と思ったのですが、2人が部屋に入ってきても能馬は書類を読むのをやめず、自分の名前を書いている。そうすると「こっちの作業の方がよっぽど大事で、君たちのことはさほど重要ではない」という雰囲気が伝わるんですよね。現場で「人として尊重していない人間と喋るときほど、丁寧に喋りますよね」という話もしたんですが、そういった雰囲気やキャラクターづくりは、ほとんど監督のアイデアや演出です。

ーーそんなファーストシーンで、能馬は佐良に指揮を任せます。監察係に来て2年の試験という名目もある反面、能馬としては彼に期待する部分もあったと感じました。仲村さんはどう思われましたか?

仲村:能馬の台詞で何度も「結構」という言葉が出てきますが、シーズン1の最終話で「佐良は『結構』と言ってやれる能力を持っているヤツだ」と認めたと思うんですね。能馬のなかには「テストを受けさせる価値もないヤツはたくさんいるが、彼はテストを受けさせてもいい。ただ、点数が悪かったら落第だ」みたいな感覚もあるのかなと思います。相対的に評価しているんじゃないですかね。

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