夏アニメ開始! ラブコメ真っ盛りのなか『義妹生活』が見せる静かさのすごみ

『義妹生活』が見せる静かさのすごみ

 毎週、「ほとんどの作品を観ている」アニメライター・はるのおとによる週刊連載「【アニメ】神回・オブ・ザ・ウィーク」。7月1日から7月14日に放送された分から注目の“神回”をピックアップ!(編集部)

 夏アニメが始まって2週間が経ち、大体のアニメが出揃いました。X(旧Twitter)で「昔みたいなセル画のアニメを観たい」的なポストがバズった翌日の夜に、セル画を使った『負けヒロインが多すぎる!』エンディングが放送されるなど、やっぱり多様なアニメが放送される日本アニメ界って素晴らしいな〜と思わされる日々ですが、アニメファンのみなさんはどんな新作を楽しんでいるでしょうか。

 というわけで、今回から夏アニメの始まりに目を引いた神回を紹介していきます。

『義妹生活』第1話 ラブコメ? いや義妹との生活を描くだけです 

TVアニメ「義妹生活」本PV

 今期の特徴と言えばラブコメ、あるいは恋愛ものが異常に多いことが挙げられます。それぞれいろんな角度で面白く、ありがたい限りですが、なかでも異彩を放っていたのが『義妹生活』でした。

 本作は高校生の浅村悠太が父の再婚をきっかけに、同い年の少女・綾瀬沙季とその母と一つ屋根の下で暮らすというストーリー。この設定だけ見ると傑作『ドメスティックな彼女』なんかを思い出してしまいそうですが、メインふたりは互いに周囲を慮る性格のおかげで変にベタベタしたりせず、両親の再婚を尊重しながら“家族”、“義理の兄妹”としての距離感を保っていきます。

 第1話ではそんな義妹との生活が始まる前後が描かれるのですが、その描き方がとにかく静かで丁寧。例えば共同生活が始まった初日の夜、悠太がアルバイトから自宅に戻ってきてリビングに入るまで約45秒ほどあるのですが、「静かに玄関を開き」「靴を靴箱に入れ」「スリッパに履き替えて」「意を決してリビングのドアを開ける」といった動作をきちんと見せることで、まだ他人同然の家族との緊張気味な新生活を演出しています。新しい住まいのため、どこの電源スイッチがどこに繋がっているかわからず、無駄な操作をしてしまう沙季の姿も印象的でした。

 もちろん挙げた箇所だけが丁寧なわけではなく終始こんな雰囲気で、普通のアニメは1話あたり300カット前後ですが、本作は150カット前後だそう。しかもどのカットも繊細な意味が込められていそうで、その意図をじっくり考えてしまいます。最近のアニメは派手な動きや精緻な描き込みなんかが称賛されることも多くそれもそれでいいのですが、そんな流行りとは真逆の方向性で原作をよいアニメにしようという意気込みを感じられる第1話(そして第2話)でした。公式サイトでは「これは、いつか恋に至るかもしれない物語」なんて書かれていますが、正直なところ、この丁寧なペースならメインふたりが恋に落ちなくても全然気にならないぜ。

 ただ、そんな本編に反して原作者の三河ごーすと先生の解説&感想ポストは毎回ものすごい圧(と得心がいく情報ばかり)で、こちらもこちらで唸らされます。

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