『デデデデ』“終末作品”を目指した劇場版の良さ 原作と比較するとビターな結末に

映画『デデデデ』を原作と比較考察

 映画『デデデデ』は「地球がくそヤバい」というキャッチフレーズがある。救いのある続きを描いた原作とは違い、映画ではあくまで“終末作品”を目指したのではないだろうか。『デデデデ』において、危機が迫っているにも関わらず日常生活を送り続ける“無力感”は作品を通して描かれてきた。私たちも、今の日常が突然終わりを迎えるなんて普段は考えないだろう。ただ、遠くの国では戦争が起こっていて、いつ飛び火するか分からない。現実世界も危ういバランスで成り立っており、一度崩壊した日常は取り戻せないと私たちに伝えるために、映画では平和な時間軸を見せなかったのだと感じた。

 東京に光の柱が上がり人々が死んでいくシーンの儚さや悲しみ、やるせなさ……。その反面、生き残った門出とおんたんの「絶対」の絆を見て、少しだけ救われたような気持ちにもなる。手放しでめでたしめでたしとは喜べない、観終わった後どこか胸につっかえるような複雑な感覚が、劇場版オリジナルエンディングならではのビターな良さを演出しているのだ。

 また、映画では前章の後半で入るおんたんの回想シーンだが、原作では物語の終盤である第8巻から第9巻にかけて描かれる。前章で門出が実は自殺していたという大きな謎を残したことで、後章に強い“引き”をつくった。前章・後章と作品を分割する際に重要なのは、全第12巻の原作をいかに上手くまとめて後章への期待をぐっと高めるかだ。映像化にあたってダイナミックに構成を変えた点も、映画ならではの見どころとなった。

 映画『デデデデ』は、幾田りらとあのによる声優陣を筆頭に、でんぱ組.incによる挿入歌「あした地球がこなごなになっても」など、大きな話題を集めつつクオリティの高い作品に仕上がっている。そして、映画と原作でまったく違うオリジナルエンディングによって、映画を観た後に原作もチェックしたくなるような効果を生み出した。ラストの違いを見比べてより楽しめる作品だ。

■公開情報
『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』
後章:全国公開中
声の出演:幾田りら、あの、種﨑敦美、島袋美由利、大木咲絵子、和氣あず未、白石涼子、入野自由、内山昂輝、坂泰斗、諏訪部順一、津田健次郎、竹中直人
原作:浅野いにお『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』(小学館『ビッグスピリッツコミックス』刊)
監督:黒川智之
シリーズ構成・脚本:吉田玲子
キャラクターデザイン・総作画監督:伊東伸高
美術監督:西村美香
音楽:梅林太郎
アニメーション制作:Production +h.
製作:DeDeDeDe Committee
配給:ギャガ
©浅野いにお/小学館/DeDeDeDe Committee
公式サイト:dededede.jp
公式X(旧Twitter):@DEDEDEDEanime

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