『関心領域』は勧めたいけど勧めたくない 今まで観たどの映画よりも怖かったエンドロール

『関心領域』は勧めたいけど勧めたくない

 すぐ目の前にあるはずなのに無関心のまま見ないふりを、見ないふりならまだしも気づくことすらできていないことは、誰にでも起こり得る/経験していることだと思います。ただ、ナチス将校であるヘスと妻のヘートヴィヒ、彼らも環境のせいで染まっただけで、私たちと同じ凡庸な人間だったとは思えません。みんながしていたから、知らなかったから、ではなく、明確に彼らが自ら望んで選択した行動だったから。その点において、本作は彼らに共感をさせることはしておらず、彼らの無関心を、ナチスのしたホロコーストへの怒りを、観客が持つようにいざなっているように感じます。

 第二次世界大戦終戦から約80年の月日が経った今も、世界では戦争が変わらず続いています。そのとき、関心を持った自分は何ができるのか。劇中のとあるシーンで登場する人物がリンゴを土に埋めたように、何か行動を起こすのか、それとも目を瞑るのか。最終的にどんな選択をとるにせよ、まずは「考える」「想像する」ことを最初にするべきだと本作は教えてくれます。

 第96回アカデミー賞で国際長編映画賞と音響賞を受賞した本作。国際長編映画賞はともかく、おそらくどんな年でノミネートがあったとしても、音響賞は『関心領域』が獲るでしょう。それくらい圧倒的で、ここまで音の怖さを、映っているものとテーマ自体との調和を突きつけた一作はなかったように思います。音を聞くためにも、その先を想像して考えるためにも、気持ちが万全なときに映画館で観ることをオススメします!

■公開情報
『関心領域』
新宿ピカデリーほか全国公開中
出演:クリスティアン・フリーデル、ザンドラ・ヒュラー
監督・脚本:ジョナサン・グレイザー
原作:マーティン・エイミス
撮影監督:ウカシュ・ジャル
音楽:ミカ・レヴィ
配給:ハピネットファントム・スタジオ
2023年/アメリカ・イギリス・ポーランド/原題:The Zone of Interest
©Two Wolves Films Limited, Extreme Emotions BIS Limited, Soft Money LLC and Channel Four Television Corporation 2023. All Rights Reserved.
公式サイト:https://happinet-phantom.com/thezoneofinterest/
公式X(旧Twitter):@ZOI_movie

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