『猿の惑星/キングダム』北米No.1の好スタート 設定やキャストの一新が功を奏す
2024年のサマーシーズン、2発目のイベント映画がやってきた。5月10日~12日の北米映画週末ランキングでNo.1に輝いたのは、『猿の惑星/キングダム』。映画史に残る傑作『猿の惑星』(1968年)に始まった人気シリーズの最新作だ。
『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』(2011年)に始まった、2010年代の『猿の惑星』リブート版3部作を手がけた20世紀フォックス(現・20世紀スタジオ)にとって、本作はディズニーとの事業統合を生き残ったプロジェクトのひとつ。ディズニーが20世紀フォックスの企画を精査した末、ビジネスとしての勝算があると判断した企画だけに、失敗は許されなかったとも言えるだろう。
結果は北米4075館でオープニング興行収入5650万ドルを記録し、事前の予測値である5000万~5500ドルをやや上回った。シリーズの歴代初動記録を保持する、リブート版第2作『猿の惑星:新世紀(ライジング)』(2014年)の7261万ドルには及ばなかったものの、『創世記』の5480万ドル、第3作『猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)』(2017年)の5626万ドルに比肩する結果となっている。
製作費は約1億6000万ドルで、これはディズニーにとっても期待通りのスタートだという(過去2作の製作費は1億9000万ドルなので、本作はややコストが抑えられてもいるのだ)。シリーズの過去作は海外市場でも優れた成績を示しており、この『猿の惑星/キングダム』も日本を含む52市場で7250万ドルを記録。全世界累計興収は1億2900万ドルとなっている。
もともと本作は5月24日に北米公開予定だったが、『マッドマックス:フュリオサ』がこの日に公開予定となったため、ディズニー&20世紀スタジオは正面衝突を回避し、公開日を繰り上げてIMAXスクリーンを確保した。事実、初動興収の41%がIMAXほかプレミアムラージフォーマット上映だったというから、この判断は正しかったのである。
Rotten Tomatoesでは批評家スコア81%・観客スコア78%、劇場の出口調査に基づくCinemaScoreでは「B」評価と、作品としての支持も手堅い。最近は「スーパーヒーロー疲れ」とも称されるスーパーヒーロー映画の不振に代表されるように、フランチャイズ作品が必ずしもヒットするとは限らないのが現実だが、本作は(ディズニーとの事業統合があったゆえに)7年ぶりの新作、しかも設定やキャストを一新したことが功を奏したのだろう。
本作の舞台はパンデミックによって人類の文明が崩壊してから300年後、高い知能と言語を操る猿たちが暮らす未来の地球。リブート版3部作を手がけたルパート・ワイアットとマット・リーヴスに代わり、監督には『メイズ・ランナー』シリーズのウェス・ボールが起用された。人気ゲーム『ゼルダの伝説』のハリウッド実写映画版にも就任済み、今後のハリウッドでSF・ファンタジー大作を担っていくであろう才能だ。
ランキングの第2位は、前週の首位を獲得したライアン・レイノルズ主演のアクション映画『フォールガイ』。初動成績こそ期待に届かなかったが、2週目である今週末は3日間で1370万ドルを記録し、前週比-50.6%というホールド力を見せた。本作にはまだ、口コミによるヒット継続というポテンシャルがまだ残されている。
健闘の要因と目されるのは、ユニバーサル・ピクチャーズが本作をロマンティックコメディの文脈で宣伝する策を講じたこと。もとよりゴズリング人気に頼っていた側面はあったものの、女性客の関心をよりよい形でひきつけることに成功したといわれる(最近のロマコメ映画に対する注目度の高さは、『恋するプリテンダー』の北米ヒットが証明していた)。
北米興収は4969万ドル、海外興収は5404万ドルで、全世界累計興収は1億ドルを突破したばかり。日本公開は8月16日だ。