『虎に翼』平岩紙は淡々とした表情に全てを込める 笑顔の裏で燃える梅子の“闘志”

『虎に翼』平岩紙は淡々とした表情で物語る

 男女が逆転した江戸パラレルワールドを描いた『大奥』Season2(2023年/NHK総合)では、和宮(岸井ゆきの)の母である勧行院を演じた平岩。和宮は弟の身代わりとして家茂(志田彩良)のもとに降嫁し、勧行院もそれを承知で男装をして大奥入りをしたのだが、次第に京に残した息子が心配になり、乱心するようになってしまう。勧行院は突然、金魚鉢を割ったかと思えば、「帰して……わたしを京に帰してえ!」と和宮に訴えるのだ。激昂しているわけでもなく、冷静にも見えるその表情からは何を考えているかはよく分からないのに、目だけには殺気があった。和宮を、息子と自分を引き離す「敵」として見ている目だ。その異様な淡々さから勧行院の「本気」が伝わってくる。このように平岩が武器としている淡々さには、色々な側面と強度があるのだ。

(奥左から)猪爪寅子役・伊藤沙莉、大庭梅子役・平岩紙、崔香淑役・ハ・ヨンス、桜川涼子役・桜井ユキ

 『虎に翼』で平岩が演じている梅子は、今のところ、自分より若い人たちを心配し、いつでも優しいみんなの姉のような存在だ。のほほんとしている梅子の姿を、苛立ったよね(土居志央梨)は「主婦の暇つぶし」と形容したが、梅子は暇つぶし程度で大学に入れる立場でもなければ、それを許してくれるような大らかな時代でもない。彼女だって並々ならぬ意思を持って、大学にいるのだ。回想では、夫や学生帽を被った息子に蔑まれる梅子の姿がちらりと映し出されている。きっと梅子の淡々さは「したたかさ」の表れだ。友人たちの生い立ちや今の立場を知りつつある寅子たち。梅子の“本当の姿”を知る時もきっと近いだろう。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『虎に翼』
総合:毎週月曜〜金曜8:00〜8:15、(再放送)毎週月曜〜金曜12:45〜13:00
BSプレミアム:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜8:15〜9:30
BS4K:毎週月曜〜金曜7:30〜7:45、(再放送)毎週土曜10:15~11:30
出演:伊藤沙莉、石田ゆり子、岡部たかし、仲野太賀、森田望智、上川周作、土居志央梨、桜井ユキ、平岩紙、ハ・ヨンス、岩田剛典、戸塚純貴、松山ケンイチ、小林薫
作:吉田恵里香
語り:尾野真千子
音楽:森優太
主題歌:米津玄師「さよーならまたいつか!」
法律考証:村上一博
制作統括:尾崎裕和
プロデューサー:石澤かおる
取材:清永聡
演出:梛川善郎、安藤大佑、橋本万葉ほか
写真提供=NHK

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アクター分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる