吉沢亮と安田顕の陽だまりのような視線が重なる 『PICU』志子田に感じた“信じられる希望”

『PICU』志子田に感じた信じられる希望

 小さな身体にたくさんの管が繋がれ、抱き上げることさえできない。それでもこちらの指を握り返すその握力に、人間に元々備わっているのだろう“生きようとする”力を思い起こさせられる。そしてそんな小さくてずっしり重い命から逃げずに、何がそれぞれの患者にとっての幸せかわからぬ中でも向き合い続ける、生身の人間が描かれた『PICU 小児集中治療室 スペシャル 2024』(フジテレビ系)。

 最初はどこか頼りなくって“死”の臭いをひたすら遠ざけようとしていた駆け出しの小児科医・“しこちゃん先生”こと志子田武四郎(吉沢亮)が、研修医を指導する立場になった。自信過剰気味な研修医・七尾(武田玲奈)と瀬戸(小林虎之介)にとっては、面食らうような過酷すぎる現実の連続が待ち受ける。2人共足がすくみながらも、自身の無力さや不甲斐なさをすぐには認められない。“できるはずの自分”がそこにいないことを受け入れられず、科長の植野(安田顕)をセクハラで人事に通報する七尾。効果が強い薬を投与した患者の容態が急変したことに向き合いきれず、自身が携えていた専門書のタイトルから母親に余計な心配を掛けてしまう瀬戸。それでもどうしたって自分本位な開き直りがまずは口を突いて出てしまう。

 志子田が見過ごさなかったのは、交通事故で意識障害を抱え寝たきりになっている子どもの前で「この子は助からないのか」と母親に問い詰められ、「あくまでその可能性はゼロではない」と答えた瀬戸の態度と選択だ。「聞かれたら何を答えてもいいのか」「ここで君が開き直るのは絶対違う」と珍しく志子田が声を荒げる裏には、彼自身のあまりに苦い実体験が思い起こされる。自分の胸の内だけに留め、嘘をつくのは不誠実ではないかという迷いから、“想定され得る可能性”について本人に事実を話したところ、生きることを諦めてしまいそうになった患者のことと、自身が犯してしまった大きな失態が、彼の中に深く深く刻み込まれているのだろう。

 やり切れない現実が次から次に映し出される中、大人よりもよほど大人な子どもの強さと健気さに胸が詰まる。「どうして私だけこんな体なの? もう死んじゃいたい」と誰のせいでもない理不尽に声を上げて泣く姿は見てはいられないが、それでも彼らにそんなふうに大声で思いっきり泣ける場所があることに安堵もする。それくらいにみんな、到底受け入れ難い苦痛や運命をなんとか咀嚼しようと懸命だ。急性リンパ性白血病と長く共存している日菜(小吹奈合緖)はそれでも自分よりも周囲を気遣うような言葉を口にするし、補助人工心臓と一緒に生きる圭吾(柊木陽太)は心臓ドナーが現れることを祈る彼女の優里(稲垣来泉)の祈りと、“生きたくても生きられなかった命”によって生かされる自分の宿命の間で揺れ、ずっとずっと真摯に自身の傲慢さを呪い向き合っている。必要以上に物わかりがよく、人より早く大人になるしかなかったのだろう彼に、志子田が心を尽くして掛けた嘘のない言葉が真っ直ぐ響く。「そんなふうに考えてくれる人のところにくる心臓はきっと幸せになると思う」という一言に、こちらまで救われる思いがする。

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