宮藤官九郎は『ふてほど』“最終回”とどう向き合う? 視聴者への“問いかけ”の先にあるもの
クドカンこと宮藤官九郎の脚本には情報量が多い。体感で通常のドラマの1.5倍程度といったところか。『ふてほど』第7話でも大量に放り込まれる昭和の小ネタに加え、キヨシ(坂元愛登)と純子が不登校の友人宅を訪ね、ファミコンで遊ぶシーンは『池袋ウエストゲートパーク』(2000年/TBS系)でマコト(長瀬智也)がひきこもりのパソコンおたく・森永(高橋一生)の家を訪ねる場面のセルフオマージュ=「そっちが来られないならこっちが行けばいいじゃん」にも見えるし、エモケンの脚本(構想)に純子とナオキの江の島デートがそのままオーバラップしていくさまは『タイガー&ドラゴン』(2005年/TBS系)で落語に現実がリンクする手法を想起させられる。
さて、物語も終盤である。市郎は孫にあたる渚(仲里依紗)や娘婿のゆずる(古田新太)から1995年(平成7年)1月17日に起きた阪神・淡路大震災で自分と純子に“最終回”が訪れることを聞いている。これまで『あまちゃん』(2013年/NHK総合)で東日本大震災、『いだてん〜東京オリムピック噺〜』(2019年/NHK総合)では関東大震災を真摯に描いた宮藤官九郎がこの『不適切にもほどがある!』で阪神・淡路大震災とどう対峙するのか。
じつは第7話でもっとも心を動かされたのは、令和の渚宅で市郎、ゆずる、純子、渚、渚の子の4世代が、たこ焼きを焼きながら比較的どうでもいい話をしているシーンだった。本来ならば集うことはなかった4世代。純子は会えないはずの自身の孫をそうとは知らずに無邪気にあやす。日常的な場面であるからこそ、時空のゆがみが生んだ幸福な“未来”の姿が切なく響いた。ここに過剰な“エモさ”を持ち込まないところが宮藤氏の筆致だ。
冒頭にも書いたが、『ふてほど』がさまざまな視点から物議を醸していることは承知しているし、私自身、特にサカエのキャラクターや言動に違和感を覚えることもある。そのうえで、まずは“最終回”まで見届けようと思う。
■放送情報
金曜ドラマ『不適切にもほどがある!』
TBS系にて、毎週金曜22:00〜22:54放送
出演:阿部サダヲ、仲里依紗、磯村勇斗、河合優実、坂元愛登、三宅弘城、袴田吉彦、中島歩、山本耕史、古田新太、吉田羊
脚本:宮藤官九郎
プロデュース:磯山晶、勝野逸未
演出:金子文紀ほか
主題歌:Creepy Nuts「二度寝」(Sony Music Labels)
編成:河本恭平、松本友香
製作:TBSスパークル、TBS
©︎TBS
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