『不適切にもほどがある!』阿部サダヲの力説に胸が詰まる 純子の娘・渚の切なる願い
純子の娘である渚(仲里依紗)が、過去からきた17歳の純子にできる限りの思い出を作ってあげようとするのもそう。その行動がどのような結果に結びついているかは、誰にもわからない。でも今は、おしゃれをして、恋をして……一生分とはいかないかもしれないが、できるだけ純子の人生にキラキラとした瞬間を積み重ねてあげたいという渚の願いだけがそこにあった。
同時に、このドラマそのものもキレイにまとまったラストなど期待するなと言われているような気がした。純子が令和の美容師・ナオキ(岡田将生)とキスしたときにはタイムパラドックスが発動せず、どの程度の恋愛的接触でビリビリするのかという条件もいまいちハッキリしていないし、市郎が令和から昭和にVRゴーグルは持って帰れるのに純子のデジカメデータは消えてしまうのはなぜか……などツッコミ要素はいくつもある。だが、きっとその細かな辻褄合わせはこのドラマが伝えたい本質ではない。
まず、納得のいく1話1話を書き上げていく。そこで今の世の中に投げかけたいことを「あ、ごめんね。なんか偉そうなこと言って」と少し柔らげて歌ってみせる。それが観る人全員に刺さるわけではないことも重々承知の上で、だ。そして賛否両論を巻き起こしてこそエンターテインメントだと言わんばかりに作り上げていっているのではないだろうか。
令和にも昭和にもいいところとそうではないところがあって、ドラマにも人生にも納得のいくラストもあればそうではないこともある。いつの間にか形を変えて正しさだったり、誰かの言葉に依存する承認欲求よりも、もっと大事な“今この瞬間の混沌”を楽しんでみるのも悪くないんじゃないかと思えてくる第7話だった。この先は「あと残り3話かな……?」なんて神の視点など忘れて、とっちらかり上等な不適切ワールドにさらに没頭したいと思う。
■放送情報
金曜ドラマ『不適切にもほどがある!』
TBS系にて、毎週金曜22:00〜22:54放送
出演:阿部サダヲ、仲里依紗、磯村勇斗、河合優実、坂元愛登、三宅弘城、袴田吉彦、中島歩、山本耕史、古田新太、吉田羊
脚本:宮藤官九郎
プロデュース:磯山晶、勝野逸未
演出:金子文紀ほか
主題歌:Creepy Nuts「二度寝」(Sony Music Labels)
編成:河本恭平、松本友香
製作:TBSスパークル、TBS
©︎TBS
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