『魅惑の人』チョ・ジョンソク×シン・セギョンに拍手! 別れの前に過ごした幸せな一日

『魅惑の人』別れの前に過ごした幸せな一日

 インは、常に数手先を読み、上手く政治を司ってきたが、モンウの存在はインにとって、心を許せる唯一の人であり、恋慕の相手だ。モンウの言葉には抗えず、インはモンウが清の皇帝の元へ行くことを受け入れる。

 モンウが清へ行く前に、インとモンウは「ごく平凡な男女として」一日を共に過ごす。モンウはインから贈られた美しい女性の衣服を身に纏い、インの元にやって来る。美しく輝くモンウの姿を見て、惚れ惚れし、言葉にならない声をあげるイン。ここからふたりは、仲睦まじく過ごすのだが、特に水切りをした時のインの表情がいい。水切りのコツを話して聞かせ、やってみせるインだが、そのあとにモンウが水切りすると、インの倍以上の数の水を切って石は飛んでいく。さらに火おこしもモンウのほうが上手く、インの複雑そうな顔が面白い。政敵争いも落ち着き、束の間の休息を楽しむふたりの姿は、コミカルなシーンもあり、心和む一方、終幕を予感させる。

 本作は、架空の王の物語でありながら、チョ・ジョンソクの秀でた圧巻の演技力で、最初から最後まで、王インに魅惑された物語であった。序盤の純粋で誠実な姿と、異母兄である先王ソン(チェ・テフン)との確執や、即位後の治世と、さまざまな顔を繊細な演じ分けで見せてくれた。朝廷や身内との権力争いでは、緊迫感溢れる心理戦と、冴えわたる頭脳で魅了し、ロマンスでは、目と表情の卓越した演技力と色気で、インに魅惑された視聴者が続出した。チョ・ジョンソクという俳優は、こんなにも色気のある俳優だったのかと、何度もインの放つ色気に胸をときめかした人も多いのではないだろうか。

 男装ヒロインとして、美しい輝きを放ったシン・セギョンは、チョ・ジョンソクとの素晴らしいケミを見せてくれた。「こんなに美しいのに女性だと気づかないの!?」という視聴者の声を、大妃が「誰が見ても女人なのに」のセリフで受けてくれたことは、制作陣の遊び心を感じさせた。

 本格時代劇として、『王になった男』の脚本家キム・ソンドクが描いた本作は、血が滾るような緊迫感と、胸をときめかせるロマンスが織り重なった魅惑的な物語であった。次回への期待を煽る毎話ラストの音楽も、美しい映像描写も見事であり、その世界の中心で秀でた演技を魅せたチョ・ジョンソクとシン・セギョンに拍手喝采を送りたい。さらに、脇を固めたバイプレーヤーたちの熱演が、本作品をさらなる高みに押し上げて、視聴者を惹きつけたことは間違いないだろう。男装ヒロインものとして、またひとつ人に勧めたくなる作品が誕生した。

■配信情報
『魅惑の人』
Netflixにて配信中
出演:チョ・ジョンソク、シン・セギョン、イ・シニョン、パク・イェヨン
演出:チョ・ナムグク
脚本:キム・ソンドク
(写真はtvN公式サイトより)

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