『不適切にもほどがある!』と『おっパン』に複数の共通点 いまのドラマは“対話”が必要?

『おっパン』と『ふてほど』に存在する共通点

 古くからある飲み屋をのぞくと、いまだに“悪しき昭和の権化”のような存在に遭遇したりするものだ。しびれをきらせて「コンプライアンスって知ってますか?」とこちらが指摘すると、「ここは飲み屋なんだからよ」と一蹴される。私はコンプライアンスにがんじがらめになった現代人のひとりなのかもしれない。しかし、その彼のハラスメント発言が市郎の口にするもののように痛快に響くことはないし、誰かに気づきを与えることもないと思う。ただただ不快なものだから。

 こういった問題は、昭和を経験した人間との間だけに起こるものでもない。電車に乗れば世代に関係なく他者の容姿をあれこれジャッジして盛り上がっている人間がいるし、友人と話していて「男なんだから」とか「女らしく」などの言葉を耳にすると、視界が揺らいでその場で崩れ落ちそうになる。がっくり。もちろんそこで私は異を唱えるわけで、場合によっては相手に変化を与えることにもなる。が、場合によっては流されてうやむやにもなる。いくら時代のスタンダードな価値観が変わっても、まったく変わることができない人がいるのも事実なのだ。

『おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!』©TOKAI-TV ©Zim Nerima/LINE Digital Frontier
『おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!』©TOKAI-TV ©Zim Nerima/LINE Digital Frontier

 1970年生まれの原田泰造と阿部サダヲといえば、いわゆる“ロスジェネ世代”に該当する。1990年生まれの私は“ゆとり世代”の人間だ。こう括ってみることで見えてくる面白さもあるのだろうが、生まれてからたどる人生は一人ひとりまったく違う。昭和生まれの人格者もいれば、平成生まれでも非常に偏った価値観で生きている人間だっている。なかなか変わることができない人というのは、当人ばかりに問題があるわけではないのだろう。個々のバックグラウンドの違いも大きく影響するし、いま置かれている環境による影響も大きい。だからもしも他者の言動に違和感を覚えて異を唱えるならば、言葉を尽くしてみる価値はあると思う。『ふてほど』の市郎だって、令和の時代で変化しているのだから。

『不適切にもほどがある!』©︎TBS
『不適切にもほどがある!』©︎TBS

 誰かの言動の違和感の正体は、コンプライアンスから逸脱した何かかもしれないし、あるいはコンプライアンスにがんじがらめになった何かかもしれない。世間と、他者と関わるためには、価値観のアップデートが必要だ。『おっパン』の誠も、『ふてほど』の市郎も、とにかく他者との対話を重ねている。自分のありのままを話し、相手の言葉に耳を傾けている。いまの時代のドラマに必要なのは、この本当の意味での対話なのではないだろうか。

■放送情報
金曜ドラマ『不適切にもほどがある!』
TBS系にて、毎週金曜22:00〜22:54放送
出演:阿部サダヲ、仲里依紗、磯村勇斗、河合優実、坂元愛登、三宅弘城、袴田吉彦、中島歩、山本耕史、古田新太、吉田羊
脚本:宮藤官九郎
プロデュース:磯山晶、勝野逸未
演出:金子文紀ほか
主題歌:Creepy Nuts「二度寝」(Sony Music Labels)
編成:河本恭平、松本友香
製作:TBSスパークル、TBS
©︎TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/futekisetsunimohodogaaru/
公式X(旧Twitter):@futeki_tbs
公式Instagram:futeki_tbs

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