神木隆之介をなぜ一人二役に? 新井順子Pに聞く、『海に眠るダイヤモンド』誕生秘話

『海に眠るダイヤモンド』新井Pインタビュー

 見応えのあるテレビドラマが始まると、日常に張りが生まれる。「早く次の話が観たい!」「それまでに1週間を頑張ろう!」と。10月20日にスタートした日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』(TBS系)は、まさにそんな番組になっているのではないだろうか。

 それもそのはず、本作は『アンナチュラル』(TBS系)や『MIU404』(TBS系)など数々のヒットドラマを生み出してきた脚本家・野木亜紀子×監督・塚原あゆ子×プロデューサー・新井順子という「黄金チーム」とも呼ばれる布陣。しかも、TBSの看板ともいえる枠に、このメンバーで初めて挑むというから、より期待が高まる。

 そんな注目の本作がどのようにして生まれたのか。新井プロデューサーが誕生秘話から、主題歌へのこだわり、そして第2話以降の見どころについても明かしてくれた。(佐藤結衣)

最終回まで観たら、一人二役の意味も見えてくる

――先日公開された野木さんと塚原さんの対談インタビューにて、本作の企画がスタートした背景に野木さんと新井さんの長崎旅行があったとお聞きしました。(※)

新井順子(以下、新井):そうなんです。その旅行のときは、このドラマをやろうなんて思っていなかったんですけどね。中華街でちゃんぽんを食べて、グラバー園、浦上、大浦天主堂、稲佐山……っていろいろと巡ったなかに、軍艦島(端島)ツアーもあったんです。そこで端島に住まれてた元島民の方の「昔、こんなことがあって」というお話がすごくて。映画館のフィルムを管理をされていた人が高波にさらわれて流されちゃったんだけど、「次の波で戻ってきたんだよ!」とか。「え!?」っていう話が次々に出てきて。これはドラマになりそうなくらい面白いなと。でも、時が止まっているような実際の端島の迫力を目の前にしたら、「再現できないだろうな」って思っていました。でも、野木さんが大量に端島のお土産を買っているのを見て、「あれ、野木さん端島が好き?」なんて記憶に残っていたんです。いつだったか「次は日曜劇場やってみたいね」という話になったときに、端島を舞台にするのはどうかなとスタートした感じです。

――過去と現代の構図で物語を描こうというのは、塚原さんのアイデアだったそうですね?

新井:はい。実は、ドラマのプロットを組み立てるにあたり、3人で合宿したんですよ。何かの打ち上げがあったのかな? そこで「飲みながら話そう」ってなって。映画を2本くらい観ながら、お酒を飲みつつ「あーでもない」「こーでもない」ってしゃべって、なんの映画を観たのかは忘れちゃいましたが(笑)。とにかく、いつもこの3人で集まるとしゃべりながら「ああだね」「こうだね」って決まっていくんです。

――第1話を観る限りでは、このドラマがどこに終着するのかまったく読めなかったのですが。

新井:最初から「エンタメにしよう」とは言っていて。実際に端島で起こった出来事をいくつか入れつつ、いろんなグラデーションをつけつつ基本はフィクションの人間模様を描く日曜劇場らしい作品にしていきます。どんどんいろんなことが起こっていくうちに、激動の人生がちょっとずつ思わぬ方向に走っていくので、中盤は中盤で、後半は後半で、違う味わいになっています。そのなかで「そこか!」っていう繋がりが見えてきますので、お楽しみに。台本を読んだスタッフも「えぇ!?」って驚いていましたから。ちゃんと神木くんが一人二役を演じていることにも意味もありますし、最終回まで観たらあらためて第1話から振り返りたくなるはずです!

ご縁とタイミングが重なり、念願叶ったキャスティング

――神木さんの一人二役といえば、ホスト役が新鮮でした。

新井:「見たことのない神木さんを作りたい」っていう思いから、現代パートではホストの役になりました。企画書をお渡しして、次にお会いしたときには、すでにホスト関連の動画をめちゃくちゃ見てきてくれていて(笑)。「この人知ってますか?」なんてこちらが勉強させてもらう勢いでした。ご本人に一人二役の感想をお聞きしたら、なんでも前向きに頑張るぞっていう鉄平と、とにかくダルいっていう玲央との「モードを切り替えるのが大変だ」っておっしゃっていましたが、見事に演じ分けられているなと思います。そこはご本人もおっしゃっていましたが、「よーい、はい!」でスイッチが入って、カットがかかったら本人に戻る没入型なんですよね。一瞬で役に入りきれるので、お芝居がすごく自由なんですよ。台本に書いてないところの行間まで埋めてくる感じというか。いつもアイデアを出してくれて、面白いことをしようとしてくれるんです。第1話で、逃げながら國村隼さんに靴下を投げるシーンがありましたけど、あれも神木くんの案で。事前に國村さんに「すみません、投げます」と言ってたとか(笑)。たぶん、ホスト役に関してもいろいろ研究されて、これからアイデアを持ってきてくれるのではないかなと思っています。実際に、ロケ地で協力していただいたホストクラブでも、神木さんがホストの方々に「どうやって街で声をかけるんですか?」っていろいろお聞きしていて、それを実践されていたんですよ。第1話で声をかけた女の子にあしらわれて「ケチ」って言うシーンがあったと思うんですが、すごく生っぽいというか、リアルに演じられているのはその成果です。実はあの日、夕方まで鉄平で、夜だけ玲央だったんですよ。さすがですよね(笑)。

――主人公に神木さんを、というのは満場一致で決まったそうですね。

新井:はい。キャスティングについてはかなり長いこと話し合いを重ねてきました。神木さんに主人公をやっていただけることになったので、「じゃあ、次は女性3人をどうしようか」と。ふだんテレビを観ない人が観ても、それこそ外国の方が観ても、パッと見分けのつくように、雰囲気の全然違うタイプの3人の女性にしたいと思っていて。そこで、杉咲花さん、土屋太鳳さん、池田エライザさんにお願いしたんです。池田さんは、偶然にもお父さまとお祖父さまが端島のとなりの高島にゆかりがあるそうで。そういったご縁もあってすぐに快諾していただきました。杉咲さん、土屋さんは、彼女たちが中高生のころからお仕事をしてきたので、「またいっしょにやりたいね」っていう思いもありましたね。斎藤工さんは、これまでも何度もお声がけしてきたんですけど、いつもタイミングが合わなくて。今回ようやく実現したという感じです。清水尋也さんについては、野木さんが賢将役のイメージがあったようです。

――現場の雰囲気はいかがですか?

新井:みなさん、本当に仲良くてずっとおしゃべりしています。その光景を見て、我ながら良いキャスティングだったなと(笑)。あと、こだわった点としては端島のシーンでは長崎県もしくは九州地方出身の方に出ていただきたいと、かたっぱしから探しました。でもなかなか見つからなくて。そういう意味でも、長崎県出身のさだまさしさんは絶対に欠かせないな、と。コンサート中なんですけど、みんなでお願いしたら「ぜひ」と言っていただけました(笑)。それから、宮本信子さんにも今回「なんとかご一緒したい」という思いを込めてお手紙を書かせていただきまして。念願が叶いまして、本当にありがたいなと思っています。

――念願叶ったという点では、主題歌も?

新井:はい。私がKing Gnuさんがいいと(笑)。日曜劇場という枠ですし、一見するとノスタルジーな世界観なので、その対照的になるようなロックっぽい力強さみたいな感じがよかったんですよね。常田さんにお会いして、いろいろお話をして書いていただくことになって。いろいろと物語のキーワードを聞かれましたね。タイトルは一度別のもので聞いていたんですけど、最終的には「ねっこ」になっていて。どうして「ねっこ」なのか、私も聞いてみたいです。

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