『海に眠るダイヤモンド』宮本信子=土屋太鳳が濃厚? 次々に入れ替わる恋の矢印
衆議院選挙を挟み、1週越しの放送となった日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』(TBS系)第2話。日本の未来を託す選択をせねばと意気込んだ後だからだろうか。高度経済成長期の端島を生きる人たちが、なんだかさらに眩しく見えた。
あのころの端島には活気があった。炭鉱は過酷な労働環境ではあるものの、働けば働くほどに得られるものがあるという手応え。狭い島ではあったものの、映画館やビリヤード場のような娯楽施設も充実しており、同好会も盛んだったという。よく働いて、よく遊ぶ。そんな鉄平(神木隆之介)たちのエネルギッシュな生き様と、現代で「だるっ……」が口癖になっている玲央(神木隆之介/1人2役)の無気力な表情を見比べると、「日本はより良くなっているのだろうか?」と疑問に思えてくる。
もちろん、端島での生活は不便な面も多かった。コンクリートで固められた端島には緑がなく、そして真水がない。現代ではレバーをひねればすぐにおいしい飲み水が出るが、端島ではまず船で運ぶ人たちがいて、水を運ぶ女性たちがいた。機械や設備の代わりに人が動いていたのだ。鉱夫住宅の便所が大雨で溢れたと聞けば、「手が空いてるやつ、来い!」と声を掛け合って駆けつける。まだ「月賦の残っているオーブンが濡れてしまう」というピンチを聞きつければ、壊れないようにみんなで力を合わせて一緒に運ぶ。人と人とが助け合わなければ生きていけない生活は、それだけ1人ひとりが求められているのだと実感できる環境でもあったのだ。
とはいえ、そんなふうに協力し合える間柄になるには、それぞれの事情が筒抜けになる煩わしさもついてくるから、現代人からすると賛否が分かれるところかもしれない。鉄平の兄・進平(斎藤工)は、2年前の台風で妻が海に流されてしまった過去を持つ。海底に眠るかつて植物だった石炭たち。その「死骸の上に立っている」と言う進平が話していたのは、戦争で傷ついた自分を癒やしてくれた妻の死を思っているようにも見えた。生き続けていくために、妻との思い出を燃料にしているのだろう。そんな妻の幻影を求めながら家族用の部屋に住む進平を、島の人たちはそっとしている。積極的に何かをしないということもまた、人と人との支え合いになっているのだと感じた。
大切な人を亡くすと、人はそこからなかなか時計を進めることができなくなってしまう。百合子(土屋太鳳)の母・寿美子(山本未來)もまたその1人に見えた。激しい台風を前にしてもなお神に祈りを捧げる母に向かって、百合子は「浦上の上にだってピカは落ちたんだよ」と言い放った。あの長崎に落とされた原爆で、浦上天主堂エリアではおよそ1万人の信徒が亡くなっているという。そして、おそらく百合子の姉をあの原爆で亡くしたのではないだろうか。どんなに神に祈りを捧げていても、そんな悲劇に見舞われる理不尽さに、百合子は我慢ならなかったのではないか。