『ブギウギ』一家に1人は居てほしい木野花の安心感 愛子は大野にとって大切な“孫”に

『ブギウギ』大野にとって愛子は“孫”だ

 一方、スズ子もまた特別なおやつを食べていた。りつ子にお茶に誘われ、楽屋を訪ねたスズ子。マネージャーから茶菓子として出されたのはドーナツ。時は1950年、GHQによる小麦粉や砂糖の統制が撤廃されたのはその2年後だから、当時はきっと貴重なおやつだったのではないだろうか。少しずつ日本が復興に向かっているのを実感する。

 しかし、終戦からまだわずか5年であり、人々の傷は癒え切ってはいない。りつ子から大野の家族の話を聞かされるスズ子。「ずっと一人で頑張ってきたはんでね」と大野がスズ子にかけた言葉に妙に実感がこもっていると思っていたら、彼女もまた大事な人を亡くしていた。かつてはりつ子の実家の呉服屋で女中をしていた大野。当時、周りが甘やかしてくれるのをいいことにわがままし放題だったりつ子は、彼女から「そんなことをしていたら、誰からも相手にされなくなる」と言われたそう。

左から、福来スズ子(趣里)、茨田りつ子(菊地凛子)

 大野は子供を子供扱いしない。甘やかしたり、闇雲に叱ったりするのではなく、人として大事なことを教える。だから、りつ子も「あんな人はいない」と大野には一目置いていた。だが、東京で再会を果たした頃には、大野は戦争で家族全員を失い、別人のようになっていたという。孫に関しては一緒に空襲から逃げ惑う中ではぐれ、そのまま二度と会えなくなってしまった。大野が愛子に向ける眼差しには孫を懐かしむ気持ちと、その孫を自分のせいで死なせてしまったという罪悪感が混じる。りつ子がスズ子に大野を紹介したのは、「昔みたいに元気になってほしい」という思いもあった。

 おミネ(田中麗奈)が率いる街娼たちの中にもいたし、タイ子(藤間爽子)もそうだったが、当時、「戦争や病気で大切な人を失った」という経験は珍しくなかったのだろう。だからといって悲しみが薄れるわけではないが、同じ経験をした者同士、その悲しみを分かち合うことはできる。

 りつ子の話を受け、スズ子は帰宅してから愛子と大野と一緒に夕飯の買い出しに行く。近所の人に勘違いされるほど、手を繋いで買い物に行く3人の姿は本当の家族にしか見えない。いや、もうすでに大野はスズ子たちにとって大事な家族なのだ。そして同時に、家庭の温かみを教えてくれる大野の存在は次の“ブギ”のヒントを与えてくれるのではないだろうか。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『ブギウギ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:趣里、水上恒司、草彅剛、蒼井優、菊地凛子、生瀬勝久、小雪、水川あさみ、柳葉敏郎ほか
語り:高瀬耕造(NHK大阪放送局アナウンサー) 
脚本:足立紳、櫻井剛
制作統括:福岡利武、櫻井壮一
プロデューサー:橋爪國臣
演出:福井充広、鈴木航、二見大輔、泉並敬眞、盆子原誠ほか
音楽:服部隆之
主題歌:中納良恵 さかいゆう 趣里 「ハッピー☆ブギ」
写真提供=NHK
公式サイト:https://nhk.jp/boogie

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