『僕ヤバ』第2期OPの圧倒的完成度 青春の“生々しさ”を具現化する名スタッフたち
青春の描写に関しては赤城博昭監督と花田十輝の脚本構成の上手さが光る。赤城は『からかい上手の高木さん』の監督も務めているが、中学生の恋愛のような交流を重ねるという点で両作は似ている部分がある。同時にコメディ寄りだった『からかい上手の高木さん』と比較すると、今作の方が言うなれば生っぽい、実在感があるような印象を受ける。作品を観て得られる甘いラブコメ感は同じかもしれないが、そこに至る経緯や演出が若干異なっているのが面白い。
また、中高生の変化していく繊細な感情を書かせたら、花田十輝はその道のエキスパートだ。『ラブライブ!』『響け!ユーフォニアム』『宇宙よりも遠い場所』など、思春期だからこそ揺れていく少女たちの感情を鮮やかに表現し、多くの視聴者を虜にした。今作の場合、上記の作品のように、大きな目的意識のあるドラマが展開されるわけではない。しかし繊細に紡がれた花田の脚本によって、登場人物たちに感情移入するような脚本となっている。
そして今作は音楽が印象に残る。牛尾憲輔の音楽は他作品も含めて、キャラクターの感情を繊細に、それでいながらも端的に表現しているように感じられるのだ。もちろん、この3者のみの力ではないが、映像演出、物語の構造、そして音響・音楽が合わさった総合芸術としての完成度が高く、その結果、生々しさと視聴者の胸を焦がす甘酸っぱい関係性が生まれている。
市川と山田の関係性と同時に、キャラクター属性にも現代的な多様性のあり方を感じさせる。市川は根暗で背が小さく、山田は身長が高く大人びている、というキャラクター設定は、既存の物語で多いパターンからは乖離している。男子は身長が高くスポーツが好きなイケメン、女子は身長が少し小さめで少食で小動物のような印象を受ける子、といったような既存の一種の恋愛作品におけるキャラクター像からは、とても遠いところにいる。
山田の食事を多く摂る大食漢な部分や大柄な体格を、市川のように身長が低くて後ろ向きな性格に悩むコンプレックスに思う中高生もいるだろう。それらはいわゆるカッコいい、かわいい姿とは少し離れているように感じられるかもしれない。過去に多く見られた設定からはみ出して、誰もが魅力的に映るキャラクター像を生み出すのは、日本のアニメ・漫画文化の真骨頂と言えるのではないだろうか。
今回はOPとスタッフについて多く紹介したが、EDやキャストも含めて多くのシーンで優れている作品となっている。市川と山田の自分の感情に戸惑いながらも相手を思い合う、生々しい中学生の感情を描いたメディアミックスの工夫を、ぜひ堪能していただきたい。
参照
・https://www.animatetimes.com/news/details.php?id=1686895009
■放送・配信情報
TVアニメ『僕の心のヤバイやつ』第2期
テレビ朝日系全国24局ネット“NUMAnimation”枠・BS朝日ほかにて、毎週土曜25:30〜放送
Prime Videoにて、毎週土曜27:00〜独占配信
原作:桜井のりお(秋田書店『マンガクロス』連載)
監督:赤城博昭
キャスト:堀江瞬、羊宮妃那、朝井彩加、潘めぐみ、種﨑敦美、岡本信彦、佐藤元、福島潤、豊崎愛生、田村ゆかり、島﨑信長、井口裕香、上田麗奈
シリーズ構成・脚本:花田十輝
キャラクターデザイン:勝又聖人
色彩設計:柳澤久美子
美術監督:黛昌樹
撮影監督:峰岸健太郎、竹沢裕一
編集:肥田文
音響監督:小沼則義
音響制作:マジックカプセル
音楽:牛尾憲輔
制作:シンエイ動画
第2期オープニングテーマ:あたらよ「僕は…」
第2期エンディングテーマ:こはならむ「恋してる自分すら愛せるんだ」
©桜井のりお(秋田書店)/僕ヤバ製作委員会
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