『ブギウギ』で発揮される趣里の身体表現 漫画さながらの愛らしいオーバーアクションも
NHK連続テレビ小説『ブギウギ』は後半にさしかかった。ヒロイン・福来スズ子(趣里)の生き方と、笑いあり、涙ありの人間模様はファンに支持され、前作『らんまん』に続いて朝ドラの復権を印象づけた。
ドラマ全体を通じていくつか注目すべきポイントがある中で、見過ごせないのが主演を務める趣里のたぐいまれな身体表現だ。役者としての力量を疑問視する事前の予想を覆したのは、趣里自身が歌う笠置シヅ子の名曲の数々であり、舞台と歌唱シーンが大きな比重を占める本作のパフォーマンスだった。
第1話冒頭。「東京ブギウギ」のイントロで飛び出したスズ子の跳ねるような歌唱は、本作の狂騒を予感させるのに十分だった。「ラッパと娘」や「アイレ可愛や」の身体全体を使った振り付けや、ステージを所せましと駆け回る動きは画面に躍動感をもたらした。かたやコミカルな場面では、表情筋を駆使した多彩な喜怒哀楽の表現が記憶に残る。広い意味で身体性が発揮される場面が多くあり、メリハリの効いた芝居で作品を際立たせている。
東京へ進出したスズ子は、演出の松永(新納慎也)からライバル会社の日宝に移籍しようと誘われる。第33話でそのことを知った梅丸楽劇団の辛島(安井順平)はスズ子の下宿先に乗り込むが、同宿の秋山(伊原六花)が機転を利かせてスズ子を窓から逃がす。バルコニーを乗り越え、大股で通りを駆けていくスズ子はアスリートばりの身軽さで、走り方が堂に入っていた。これはほんの一例にすぎない。
幼少期からバレエをたしなみ10代でイギリスに留学した趣里は、しなやかな身のこなしで動作の一つ一つが洗練されている。グランドピアノを挟んで羽鳥(草彅剛)と向き合うシーンの歌いながらステップを踏む動作も、つま先まで神経が行き届いており、ほど良い緊張感と優雅さを感じさせる。舞台やセットの狭い空間での振る舞い方、観客・カメラからどう見えているかを肌感覚で理解しているのだろう。
趣里の瞬発力は運動神経だけではない。ユーモラスな描写の多い『ブギウギ』で小柄な歌姫はかっこうのいじられキャラである。楽しみにしている視聴者も多いのが、第32話や第70話の肩や手をつかまれて揺さぶられる動作。相手は羽鳥だったり、愛助(水上恒司)だったりとその時々で変わるが、漫画さながらのオーバーアクションは愛らしくておかしい。キャッチーな魅力も趣里の武器だ。