『正直不動産2』福原遥VS倉科カナ、それぞれの魅力が光る 名子役・永尾柚乃も活躍
嘘のつけない不動産営業マンが活躍する痛快お仕事コメディ『正直不動産2』(NHK総合)。第3話「もしもピアノが置けたなら」では、カスタマーファースト命の月下(福原遥)が難点の多い物件の売却に苦戦する。
狭小住宅に住む岡田夫妻(浅利陽介、佐津川愛美)は自宅の売却を希望している。永瀬(山下智久)が担当から外され、月下は意気揚々と新しい担当に立候補した。月下は岡田夫妻の力になろうと意気込むが、夫婦の心がすれ違う様子を見て、苦悩し、売却に行き詰まる。一方、ミネルヴァ不動産の花澤(倉科カナ)も同じ物件を担当することになる。
『ブラッシュアップライフ』(日本テレビ系)で注目を集めた永尾柚乃が岡田夫妻の娘・朋花を演じ、購入を検討する顧客の前で「ママとパパがケンカしちゃうのはこの家のせいなの」と無邪気な声で言う場面にはクスリとしてしまった。しかし娘・朋花の無邪気さ、純心さが「娘のため」を理由にすれ違う夫婦の心をつなぎ止める。
永瀬、月下、花澤に朋花は屈託のない笑顔で「本当はね、ママもパパもすっごく仲いいんだよ」と言った。岡田夫妻が朋花の言葉をしっかりと受け入れ、自宅を売却するのではなく、隣の家を購入して増築することに舵を切れたのは、嘘がつけない永瀬、カスタマーファースト命の月下、そして同世代の息子をもつ花澤との対話のおかげでもある。永瀬、月下、花澤のそれぞれの思惑は異なるものの、夫婦はすれ違いの原因を明確に打ち明けることができたし、一番大切にすべきものに気づくことができた。
そんな第3話では、月下を演じている福原遥と花澤を演じている倉科カナの表情が魅力的だった。
月下は不動産で人を幸せにすることを目標にしている。そんな月下を演じる福原の演技はどこか突き抜けていて、観ていて面白いうえに清々しい。新しい担当に立候補する場面では、登坂不動産のやや殺伐とした空気を打ち壊すような弾ける笑顔を見せたかと思えば、部長・大河(長谷川忍)に「はい、はい、はい!」とアピールし続ける。この勢いの良さ、めげなさは永瀬や十影(板垣瑞生)にはない特徴だ。あまりにも溌剌すぎる姿に思わず笑ってしまう。売却に至らず苦戦しつつも、岡田夫妻が狭小住宅を買った決め手を永瀬から聞き、自信が湧いてきた月下は、小坂明子の「あなた」を気持ちよく歌い始める。唐突に始まった歌唱シーンには驚いたが、その歌いっぷりからは不動産で人を幸せにしたい月下らしい人情味が伝わってきて、あまり違和感を覚えなかった。
月下の営業スタイルは、単に不動産を売買するだけでなく、その家で暮らす人たちの生活をも見据える。岡田夫妻の問題に目を向けていたからこそ、ペットとともに暮らす筒井夫妻(さとう珠緒、伊東考明)に安易に狭小住宅を勧めないところが彼女らしい。狭小住宅が売れず、永瀬が「残念だったな」と声をかけると、月下は「ホッとしました」と答えた。筒井夫妻に営業をかけている時も、永瀬との場面でも、狭小住宅の売却が行き詰まっていることに気落ちする様子はうかがえる。けれど、月下は目の前の顧客が大事にしていることを優先するカスタマーファーストというモットーを決して曲げなかった。やや落ち込んだ様子も見せたが、その姿からはモットーを貫いたことへの安堵も感じられ、月下の強みがどれだけ芯の強いものかがはっきりと伝わってきた。