『哀れなるものたち』再び北米トップ10 “無風の1月”も水面下ではアカデミー賞戦略進む
北米映画興行は久しぶりに大きな動きのない週末を迎えた。1月19日~21日の興行収入ランキングの第1位は、先週と変わらず、青春コメディ『ミーン・ガールズ』(2004年)のミュージカル映画版『Mean Girls(原題)』。そのほか、第6位までが先週とまったく同じ並びとなった。
『Mean Girls』は週末3日間で1170万ドルを記録し、公開後10日間で5000万ドルを突破。前週比-59.1%とやや数字は落ち込んだが、逆に言えば公開直後に大きな注目が集まったということで、これはスーパーヒーロー映画などにも通じる傾向だ。製作費は3600万ドルと抑えめだから、2週目の下落率も大きな問題ではないだろう。
第2位はジェイソン・ステイサム主演『The Beekeeper(原題)』で、北米の累計興収は3113万ドル。最終的に4500万ドルという悪くない成績に着地すると予想されている。これに続くのが、第3位『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』、第4位『Anyone But You(原題)』、第5位のイルミネーション最新作『FLY!/フライ!』だ。
特筆すべきは、シドニー・スウィーニー&グレン・パウエル主演のロマンティックコメディである『Anyone But You』が思わぬヒットを続けていることだ。製作費2500万ドルに対し、北米興収は6422万ドル。世界興収は1億ドルを突破し、R指定のコメディ映画としては『ブリジット・ジョーンズの日記 ダメな私の最後のモテ期』(2016年)以来の快挙となった。いまやコメディ映画は劇場でヒットしないともいわれるが、例外は確かに存在するのである。なお、現時点で日本公開は未定だ。
ちなみに、トップ5のうち3作品が公開5~6週目の「クリスマス映画」なのはいささか寂しいようにも思われるが、これはさほど悲観すべきことでもない。ちょうど1年前、2023年1月20日~22日の週末ランキングは、1位が『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』、2位が『長ぐつをはいたネコと9つの命』といずれも2022年のクリスマス映画だった。
すなわち、秋からホリデーシーズンにかけての公開ラッシュを終えた1月は、さほど大きな動きがないのが通例と見ていい。確かに大作不足であることは事実だが、2023年1月20日~22日の北米市場が累計7240万ドルを売り上げたのに対し、今年は累計6800万ドルと、かろうじて前年比-8%の数字にとどまったのだ。2023年の脚本家&俳優ストライキが、その本格的な影響を示すのはむしろこれからだろう。
今週の注目は、日本でも1月26日に劇場公開される『哀れなるものたち』だ。エマ・ストーン主演、ヨルゴス・ランティモス監督、サーチライト・ピクチャーズ製作という『女王陛下のお気に入り』(2018年)チームの新作で、ヴェネチア国際映画祭で最高賞(金獅子賞)を、ゴールデングローブ賞では作品賞・主演女優賞(ミュージカル・コメディ部門)に輝くなど世界中の映画祭で高い評価を受けている。
いよいよアカデミー賞のノミネーションが1月23日(日本時間)に発表されることを控え、サーチライトは公開7週目にして本作の公開規模を一気に拡大。この週末は上映館1400館(前週比+820館)で204万ドルを稼ぎ出し、再びトップ10圏内に返り咲いた。アカデミー賞でも数々の部門にノミネートされることは確実であろう、次の週末はさらに1800館以上まで規模を拡大し、ますます興行面でも存在感を高めていく。