『ブギウギ』スズ子がぶち当たる“結婚”か“仕事”か 過去の朝ドラから考える悩みの本質
スズ子に状況が近いのは、『ちむどんどん』の暢子(黒島結菜)かもしれない。その理由に、彼女自身がビジネスをしている身でいること、結婚をしても彼女が店を持つ夢を諦めなくていいように和彦(宮沢氷魚)が応援してくれたこと、一方で和彦の母親が2人の結婚に最初懐疑的だったことが挙げられる。スズ子の場合も、「福来スズ子」の大ファンでもある愛助が彼女のキャリアを何より応援し、背中を押してきた様子がこれまで印象的だった。だから本来ならスズ子にとって「結婚」は障害にはならないはずなのだが……トミも酷いお人だ。
彼女たちは生きた時代はバラバラでも、世間的にまだ女性が婚約・結婚の過程において、男性よりも力が持てなかった時代を生きていた。妻としての役割を全うしなければいけない、そんなプレッシャーは現代でも決してなくなったわけではない。そしてそれぞれの悩みに共通する、根幹にある問題はやはりいつだって「結婚前の(個人としての)自分」と「結婚後の(妻としての)自分」の間にある違いや変化にどう向き合うかではないだろうか。誰かと暮らすことで少なからず失う、一人の時の自分らしさ。もちろん、それを失わないで一緒になれる人だっている。スズ子にとっての愛助も多分そんな存在だ。しかし、彼のために簡単に“歌手としての自分”を捨てられるわけじゃない。
「ワテはワテだす」。第16週にタナケンとの舞台を通して、どんな状況でも自分らしさを捨てないことを決心したスズ子。このタイミングだからこそ、スズ子はやはり“ワテ”を貫くことの重要さを自身の心の底でわかっている。辛いなあ。自分を守るために愛する人との未来を失うことになるのか、それとも大切なもう一人の自分と別れるのか。週タイトル「ほんまに離れとうない」のタイトルからして、第17週は切ない展開が我々を待ち構えていそうだ。
■放送情報
NHK連続テレビ小説『ブギウギ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:趣里、水上恒司、草彅剛、蒼井優、菊地凛子、生瀬勝久、小雪、水川あさみ、柳葉敏郎ほか
語り:高瀬耕造(NHK大阪放送局アナウンサー)
脚本:足立紳、櫻井剛
制作統括:福岡利武、櫻井壮一
プロデューサー:橋爪國臣
演出:福井充広、鈴木航、二見大輔、泉並敬眞、盆子原誠ほか
音楽:服部隆之
主題歌:中納良恵 さかいゆう 趣里 「ハッピー☆ブギ」
写真提供=NHK
公式サイト:https://nhk.jp/boogie