『院内警察』は刑事もの×医療もののハイブリッドな設定 桐谷健太の人たらしぶりが光る

『院内警察』ハイブリッドな設定 

 また、オペが迫った美紀(宮崎莉里沙)の大切なぬいぐるみを隠してまで手術を延期させ、自ら執刀するのを避けようとする主治医の伊藤(西村元貴)に迫る武良井の様子も気になる。手術が怖くなってしまい「外科医なのにメスを握れないなんて情けない」と嘆く伊藤に、「メスを握れるから外科医でしょ。外科医だからってメスを握っちゃ殺しちゃうよ」と語気を強める。さらに「ほっといても同じじゃない?死なせちゃえばいい」とあえて突き放すかのような発言をする。この武良井の揺さぶりが結果伊藤に医師としてのプライドや初心を思い起こさせ彼を手術に向かわせたわけだが、どうやら武良井は病院側の、医師側のミスで美咲を亡くしてしまったのだろう。

 そしてどうやらその事件に天才外科医の呼び声高い榊原が関わっているようだ。第1話目から彼が抱える闇の片鱗が暴かれたが、榊原はオペがしたくてたまらないようで、本来は手術を急ぐ必要のある恵美に不要な検査を受けさせオペ時期を後ろ倒しにして自分が全てのオペを担当できるようにしていたようだ。それを知ってしまってから榊原からの山際への土下座を思い返すとなんだか身の毛のよだつ思いがする。「私が手術して必ずあなたの奥さんを救います」という言葉は「どうしても私に奥さんの手術をさせて下さい。そのために奥さんの身体を貸して下さい、献体して下さい」と懇願しているかのように聞こえてしまう。武良井の記憶の中の美咲が力なくベッドの中で自分の手術の番が回ってこずに待たされている映像が思い返される。さらには厄介なことに榊原に難易度の高いオペを便宜しているのは外科部長の倉田雄二(神尾佑)からの指示もあるようだが、倉田は榊原のこの異常性や“毒”に気付いているのだろうか。

 最後に武良井がよく舐めているチュッパチャプスは、美咲のいない空っぽのベッドを前に喪失感に苛まれている武良井に医師・尼子唯織(さとうほなみ)がふと差し出したものだったようだ。当時の武良井にとってその飴の甘さはどう記憶されたのだろうか。これからさらに武良井と榊原の過去がどう交錯していたのか、彼らの中にある因縁が明かされるのに注目したい。

■放送情報
『院内警察』
フジテレビ系にて、毎週金曜21:00〜21:58放送
出演:桐谷健太、瀬戸康史、長濱ねる、市村正親、さとうほなみ、馬場ふみか、玄理、工藤美桜、西村元貴、神尾佑、でんでんほか
原作:『院内警察 アスクレピオスの蛇』酒井義(原作)、林いち(漫画)(秋田書店『ヤングチャンピオン』連載)
脚本:天本絵美、諸橋隼人、相馬光
演出:石川淳一、木村真人、北坊信一
音楽:馬瀬みさき
編成企画:日高峻
プロデュース:中村亮太
制作:フジテレビ
制作著作:共同テレビ
©︎フジテレビ/共同テレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/innai_keisatsu/
公式X(旧Twitter):https://twitter.com/innai_keisatsu
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