『正直不動産2』が楽しみで仕方なくなるSP 山下智久の“演じ分け”によって増す物語の厚み
1月3日に『正直不動産スペシャル』(NHK総合)が放送された。『正直不動産』(NHK総合)から半年以上の時を経た今、懐かしい人たちとの再会に胸が熱くなる。永瀬財地(山下智久)のライバルは、もはや桐山(市原隼人)ではない。数々の伏線もちりばめられ、新たな物語のはじまりを予感させるストーリーとなった。
登坂不動産の仕事始めに、晴れ着姿で集まった社員たち。月下(福原遥)もまた、赤い振袖で出勤してきた。登坂社長(草刈正雄)の新年の挨拶が始まり、永瀬は営業成績1位を条件に課長に昇進できるチャンスを与えられる。だがトップの座を争うのは、かつて教育係として面倒を見てきた月下だった。
月下はカスタマーファーストを徹底することで成約数を増やし、昨年の営業成績は1位。立派に成長し、永瀬の強力なライバルになっていたのだ。“正直風”のせいで相変わらず嘘がつけない永瀬は、それでもなんとか1位になろうと四苦八苦。そんな時に、友人の希志(溝端淳平)から連絡が入り、家が競売にかけられそうになっていると相談が。永瀬は友人のピンチを救うべく、裁判所主導の競売でなく所有者主導の任売で売れないものかと奔走するのであった。そんな時、月下にも祖父に関わる危機が迫っていた。2人は営業成績を追いながらも、それぞれの正義を貫く仕事ぶりで解決を試みる……。
お正月の華々しさをふんだんに盛り込んだ画面に、ついつい釘付けになってしまう。月下の艶やかな振袖姿を満喫したかと思いきや、すかさず部長の大河(長谷川忍)が大活躍。「昭和営業」の極意を披露し、顧客との接待でカラオケを歌いまくるのであった。ここでは大河、永瀬、月下の3人が、荻野目洋子の往年のヒット曲「ダンシング・ヒーロー(Eat You Up)」をノリノリで歌い踊る姿も。“正直風”のせいで踊れないことにはできず、嫌々ながら身体が勝手に動きまくってしまう永瀬。そんな葛藤の中でも、キレのあるダンスと熱い歌声を魅せられるのは、さすが山下智久と見惚れてしまう。後ろで懸命に踊る福原遥のナイスアシストも忘れてはならない。
だが『正直不動産スペシャル』は、そんなお祭りムードだけでは終わらない。これまでに『正直不動産』で丁寧に描かれてきたヒューマンドラマの要素が、スペシャルの中にもしっかりと描かれているのだ。永瀬がなんとか希志を救いたいという思いと、自身の過去、そして登坂不動産に入社したきっかけとが見事に重なるエピソードには、『正直不動産』がキャラクターの背景を丁寧に描いてきたことが最大限生きていると感じられた。そこで山下自身が“正直風”に吹かれるコミカルな永瀬から、友人思いの熱い心を忘れない永瀬までを器用に演じ分けることで、物語はさらに厚みを増すのである。