『相棒』元日スペシャルは過去と繋がる特別な回に 各キャラクターから感じた信念と優しさ
だんだんとエスカレートしていった「お願い」は、栗原が姉小路に言い寄られていた悦子を陥れるために仕掛けた罠であった。仕事先の東国で、黒須と会い、栗原のおつかいをしただけの悦子は、なぜかスパイ容疑で捕えられてしまう。
栗原を怪しんだ右京と亀山は、事前に美和子や伊丹(川原和久)、芹沢(山中崇史)、出雲(篠原ゆきこ)と東国に来ていた。でも、彼らには起こりそうな犯罪を未然に防ぐことはできても、捕えられてしまった人を逃すようなことはできない。そこで右京は内閣情報官である社に直々にお願いし、悦子を助け出す手立てを打ってもらったのである。突然であまりに無理な要望を通そうとする右京の姿に珍しさを感じたが、右京にとって悦子はそれほどまでに大切にしたい存在なのだろう。その行動から享との強い絆を感じた。
いかにも裏で暗躍できそうな美しくダンディな声の領事館員(津田健次郎)の登場に驚いたのも束の間、彼の指示に従って、移送される悦子を奪還する右京と亀山、それをサポートする伊丹と芹沢、そして戸惑う彼女を引っ張り、変装させ、別人として帰国させる準備をした美和子と出雲。彼らの見事な協力体制に、『相棒』はいろいろなタイプの“相棒”を生んできた結果、いつの間にか“チーム”になっていたことを実感した。
今回、もうひとつ大きな役割を果たしたのがマリアである。マリアは父親が訳あってそばにいないという共通点から、桔平と頻繁に連絡を取るようになっていたのである。きっと桔平が感じている漠然とした不安は、マリアも経験したことがあるもので、理解できるところがあるのだろう。右京を介して生まれた素敵な友情である。年上の女性を頼りにしている桔平の姿は、年上のパートナー・悦子にぞっこんだった享の姿にも重なってみえた。
享との不本意な別れから約10年。気がつけば長い時間が経ってしまった。それでもなお、亨の家族のために力を尽くそうとする右京に、変わらない信念と優しさを感じ、とても心が温まる回となった。
放送の直前には、石川県を中心に大きな被害をもたらしている地震が起き、放送も一部が中断されるなど、全国で不安な一夜を過ごした人が多かったことだろう。でも、右京たちのように協力すれば大変に思えることでも乗り越えられるし、桔平とマリアのように小さな繋がりがその人の心の支えとなることもあるはずだ。右京は逃げ込んだ領事館で年を越し、亀山と凧(カイト)をあげながら「いい年になるといいですねえ」と呟いた。これはもう、右京だけではない、今年の私たちの願いだ。
■配信情報
『相棒 season22』元日スペシャル「サイレント・タトゥ」
TVer、TELASAにて配信中
出演:水谷豊、寺脇康文、森口瑤子、鈴木砂羽、川原和久、山中崇史、篠原ゆき子、山西 惇、田中隆三、松嶋亮太、小野了、片桐竜次、杉本哲太、仲間由紀恵、石坂浩二、美村里江、新納慎也、真飛聖ほか
脚本:輿水泰弘
監督:権野元
制作:テレビ朝日/東映
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