『相棒』反町隆史と水谷豊の7年間を振り返る “右京一強スタイル”を打破した冠城亘

『相棒』反町隆史と水谷豊の7年間を振り返る

 テレビ朝日系ドラマ『相棒 season20』で、7年にわたり4代目「相棒」を務めてきた反町隆史が、3月23日放送の第20話「最終回スペシャル『冠城亘最後の事件―特命係との別離』」で卒業を迎える。そこで、水谷豊演じる杉下右京の相棒として歴代最多出演記録を持つ亘について、改めて振り返りたい。

 反町演じる冠城亘が登場したのは、2015年10月14日放送のseason14から。元々法務省のキャリア官僚で、「現場に興味がある」と警視庁へ出向。season13で、3代目相棒・甲斐享(成宮寛貴)が実は「ダークナイト」だった一連の事件で、右京は上司としての責任を問われ、無期限停職の処分を受け特命係は解散。イギリスへ旅立っている間に、空き部屋となった特命係で暇を持て余していた亘。とある殺人事件で帰国した右京と出会い、解決後も「同居人」として特命係に居座り、右京と共に事件を解決していく。

 亘は元々正義感の強い性格もあり、事件解決に向けて裁判所の令状発行を阻止する捜査妨害を起こしたことがきっかけで、法務省を退官。警察学校に入り直し、警察官に転身した過去がある。社美彌子(仲間由紀恵)が課長を務める総務部広報課に配属されるも直談判し、season15で正式に特命係に配属される。

 歴代最高の「相棒」の呼び声が高い理由を考えると、右京との大人の距離感だろう。これまでの相棒は、初代・亀山薫(寺脇康文)は熱血漢、2代目・神戸尊(及川光博)はクールでキザな堅実派、3代目・甲斐享(成宮寛貴)とは師弟関係にあたるなど、右京とは対照的な存在だった。それに対し、4代目の亘は、右京に似た人物。season20の第19話でも、パパ活の疑いで上層部たちに呼び出された亘が、「正義感は評価するが、残念ながら手段を選ばないのがお前の欠点だ」「思ったより信用ないぞ」「自業自得だ」と問い詰められるという、改めて亘のキャラを総評するようなシーンがあった。掴みどころがなく飄々とした性格や、事件に対する執念や正義感、そして理知的だがルールを無視する危なっかしさも似ている。

 バディものは対照的な2人がぶつかり合いながらも難題に立ち向かうというのが定番だが、当初は「相棒」とは言わず「同居人」としての距離感だった。亘は、最初から右京が「危険人物」だと聞かされていただけに、次はどんな行動をとるのかを面白がって付いて行き、右京が手詰まると「次は僕のターンですね」と、頭脳やコネを利用した別ルートの作戦で事件解決に導いていた。基本的にはぶつかり合うこともなく、お互いのお手並み拝見といったところで、実力も買っている。この定番ではないバディスタイルだからこそ、右京一強スタイルを打破し、物語の可能性を広げたと考えられる。いじられる相棒を得た右京が嬉しそうなのもファンにはたまらない。

 特に象徴的だったシーンは、裏カジノ摘発を軸に、違法捜査をする警察と特命係の対決を描いたseason17の第4話「バクハン」。角田六郎課長(山西惇)が追求を止めようとするも右京は聞かず、亘や青木(浅利陽介)は課長を裏切れないと捜査に同行しないことを告げ、右京は孤立。後に亘は「ぼくが機転を利かさなかったら誰も味方がいなくなってましたよ」と、右京を完全孤立させないために一旦距離を置いたことを明かし、それに「君なら先を読んでると思いましたよ」と返す右京という、先を読んだ2人の信頼関係が伺えた。そして亘が「俺は人に踊らされるのが嫌なんです。自分で思うように踊りたい」と言うと、右京は「思うままに僕が走り、君が踊るわけですね」と返し、亘が「それが特命係です。じっとしててください」と答えるという、2人の関係性が決定付けられた一連の会話。上下関係ではなく、相手を信頼する右京というのはこれまでになく、右京の後ろに亘がいる安心感がある。逆もまた然りで、変に同等になるのではなく、手法は違うが正義に向かうゴールが一緒というスマートな距離感が、これまでにない大人の相棒を感じさせた。

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