2023年の年間ベスト企画
成馬零一の「2023年 年間ベストドラマTOP10」 日本の“テレビドラマ”だからできること
6位の『VIVANT』は今年一番の話題作。海外ロケを駆使したスケール感のある映像はテレビドラマでは破格のもので、複数の脚本家がチームを組んで作る脚本作りなど、海外ドラマの制作体制を意識した作りとなっている。一方、物語は日曜劇場が作り続けてきた日本のサラリーマン文化を基軸とした中年男性向けドラマを国家規模の物語に昇華したものとなっており、日曜劇場で話題作を作り続けてきた福澤克雄だからこそ可能な大作ドラマとなっていた。
『VIVANT』は日曜劇場を“超える”結末に ノゴーン・ベキではなく“乃木卓”としての最期
TBS日曜劇場で放送されていた連続ドラマ『VIVANT』が最終回を迎えた。 『華麗なる一族』や『半沢直樹』といったTBS日曜…
7位の『THE DAYS』は『コード・ブルー –ドクターヘリ緊急救命-』シリーズ(フジテレビ系)で知られる元フジテレビのプロデューサー・増本淳が企画・脚本・プロデュースを担当。東日本大震災の影響で起きた福島第一原発事故の対応に追われる人々の姿をドキュメンタリータッチで描いており、当時感じた恐怖を思い出した。
8位の『季節のない街』は宮藤官九郎が監督と脚本を手がけた配信ドラマ。黒澤明の映画『どですかでん』の原作となった山本周五郎の同名小説の映像化だが、舞台を現代に置き換え「ナニ」という災害で被災した人々が暮らす仮設住宅を舞台にした寓話的なドラマとなっていた。
9位の『ブラッシュアップライフ』は、お笑い芸人のバカリズムが脚本を担当。タイムリープというSF的アイデアを用いた作品だが、主人公が常に冷静で淡々としているのが新鮮。『いちばんすきな花』の静かなトーンもそうだが、この平熱感こそが今の時代の気分なのだろう。
10位の『あなたがしてくれなくても』はセックスレスの二組の夫婦を主人公にしたドラマ。劇中に漂う抑圧されているがゆえに漂ってくる色気が凄まじかった。
『あなたがしてくれなくても』を成立させた俳優陣の繊細な芝居 みちの選択も納得の結末に
木曜劇場(フジテレビ系木曜22時)で放送されていた連続ドラマ『あなたがしてくれなくても』が、6月29日放送の特別編をもって終了し…
Netflixなどの配信サービスが身近になったことで、アメリカや韓国のドラマが持つ豪華な映像表現と社会性の高い物語に遅れを取っているように感じ、少しでも誤差を埋めようと試行錯誤していたのが、近年のテレビドラマの流れだった。だが、今年は『いちばんすきな花』を筆頭に日本のテレビドラマならではの魅力を打ち出した作品が多く、国内で製作された配信ドラマもまた、日本のテレビドラマの良さを積極的に取り入れようとしていた。今後、両者の境界は曖昧になっていくのかもしれない。
■配信情報
木曜劇場『いちばんすきな花』
TVer、FODにて配信中
出演:多部未華子、松下洸平、神尾楓珠、今田美桜、齋藤飛鳥、一ノ瀬颯、白鳥玉季、黒川想矢、田辺桃子、泉澤祐希、臼田あさ美、仲野太賀、田中麗奈ほか
脚本:生方美久
プロデュース:村瀬健
演出:髙野舞
音楽:得田真裕
主題歌:藤井風「花」(HEHN RECORDS / UNIVERSAL SIGMA)
制作・著作:フジテレビ
©︎フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/ichibansukina_hana/
公式X(旧Twitter):@sukihana_fujitv
公式Instagram:@sukihana_fujitv