『あなたがしてくれなくても』を成立させた俳優陣の繊細な芝居 みちの選択も納得の結末に

『あなたがしてくれなくても』の結末を再考

 木曜劇場(フジテレビ系木曜22時)で放送されていた連続ドラマ『あなたがしてくれなくても』が、6月29日放送の特別編をもって終了した。

 ハルノ晴の同名漫画(双葉社)を原作とする本作は、セックスレスに悩むみち(奈緒)と夫の陽一(永山瑛太)、みちの先輩の新名誠(岩田剛典)と妻の楓(田中みな実)の2組の夫婦の物語だ。

 セックスレスに悩むみちと誠は、お互いの悩みを相談する中、次第に惹かれあっていく。2組の夫婦の心は次第にすれ違っていき、ついに誠と楓は離婚。みちも子供を持つことに対する意見の違いが決定的な断絶となり、陽一との離婚を決意する。

 その後、誠はみちに「ずっといっしょにいてください」と告白。しかし、みちは「私は誰にも頼らず、一人で生きていきたいです」と言って、誠の告白を断り、第10話は終わる。

 そして、物語はついに最終話を迎えたのだが、最終的にみちが選んだ選択は意外なものだった。

 まず最終話では時間が飛び、2カ月後となる。なぜか誠は陽一の働くコーヒーショップを訪れるのだが、陽一は、みちが別の男と会っている場面に遭遇したことを誠に話し出す。

 何が起きているのかよくわからない状態で物語は進み、みち、陽一、誠、楓のその後の姿が描かれる。前回まで濃厚だった緊張感の中に漂う色気は失われ、4人は平穏な暮らしを取り戻しているように見える。

 その後、誠がみちと付き合っていなかったことを知った楓は街で偶然出会ったみちに話しかけ、2人でお酒を飲むことに。第8話で反響を呼んだ「地獄のランチ」の再来かと思いきや、誠がみちのことを思っているということを楓は必死で伝えようとする。

 「やっぱり、かっこいいです」と言うみちに対して「ケンカ売ってる?」と言う楓。2人のやりとりは微笑ましく、次第に2人が意気投合し、友情のようなものが芽生えていくのが伝わってくる。みちとの関係を「戦友」と言う誠に苛立っていた楓だが、2人の会話を見ていると、みちと楓の方が戦友だと言えるかもしれない。

 その後、楓はみちを連れて、陽一が店長を務めるコーヒーショップへと向かう。店にはなぜか誠もいて、4人は一堂に会することとなる。改めて自分の気持ちをみちに伝える誠に対し何も言わない陽一。その後、店を出る3人だったが、みちだけが店に戻り、陽一がぼそっと「みち好きだよ」と言ったことで、2人はよりを戻す(ように見える)。

 最後に坂道を2人で登っていく姿が描かれ、物語は幕を閉じるのだが、この終わり方は賛否が分かれており、結局、みちに振り回されただけではないかと、苛立つ視聴者も少なくない。

 もやもやするのは、セックスレスの問題が解決したのか、もしくは性行為がない生活をみちが受け入れたのかが、曖昧だからだろう。今後、2人が子供を作るかどうかもわからない(最後の映像も未来なのか過去なのかも実はわからない)。

 後は視聴者の想像に委ねたのだろうが、多くの視聴者が本作に惹きつけられたのは、セックスレスという表立って語ることが難しい夫婦の問題の内実を描いたからであり、セックスレスをきっかけに妻のいる男性に惹かれてしまったみちの不倫ドラマの行方が気になったからだ。だから、消化不良だと感じる人がいるのは仕方がないのかもしれない。

 ただ、本作を「セックスレスを入り口にした不倫ドラマ」という言葉で乱暴にまとめるのは何か違うのではないかと、ずっと感じていた。

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