『うちの弁護士は手がかかる』は唯一無二な作品に 最終回ラスト6分はやりたい放題?

『うち弁』最終回ラスト6分はやりたい放題?

 『うちの弁護士は手がかかる』(フジテレビ系)の最終回を観終えた今、リーガルドラマとしてストレートないい最終回だったと思う反面、ラスト約6分ほどで大いに戸惑っている部分もある。

 晴れて弁護士バッジを取り戻し、正式に弁護士資格が認められた杏(平手友梨奈)は、看護師・大橋いずみ(志田未来)の不当解雇、ひいては青海医大病院の医療過誤を明らかにしていく。それは同時に杏の父・昌幸(山崎一)が7年前に隠蔽した過去であり、病院の担当弁護士である姉のさくら(江口のりこ)との最終決着をつける場でもある。

 病院の跡取りである武藤慎一(浅香航大)が起こした医療ミスの証拠は、さくらがすでに焼却してしまっていた。医院長の絶対的な権力が立ちはだかり、有力な証言も取れぬまま、杏といずみが絶体絶命のピンチを迎えていた、その時、蔵前(ムロツヨシ)が和解交渉の場に連れてきたのは武藤本人だった。

 たとえ医療ミスを起こし老人一人を亡くしてしまっても、腕のある医師の武藤はこれからの未来で何人もの患者の命を救っていく――それが当時、昌幸が説いた弁護士としての正義だった。しかし当然、病院というのはチームとして周りの支えや信頼がなければ成り立たない。周りの医師たちをはじめ、多くの患者たちの思いさえも踏みにじってきた武藤は、7年前、そして今回と2度医療過誤を起こし、それを隠蔽したことを認める。武藤の告白によって、看護師たちが院長のセクハラやパワハラを暴露したことは、弱者の味方である香澄法律事務所というチームの勝ちだ。

 香澄法律事務所と天野法律事務所の決着はついたが、杏とさくらの正義のあり方は対立し続けていた。父の考えを正当化するさくらに、杏は「誰かの幸せのために、ほかの誰かの幸せを犠牲にすることが正しいと思いません」と主張する。異母姉妹であるさくらが、杏を憎んでいたのは、両親の愛情を一心に受けてきたのが杏だったからだ。そのことで自分は生まれてこなければよかったと思う時もあったが、そんな自分でも信じてくれる人、支えてくれる人、助けることができたかもしれない人たちがいた。全ては香澄法律事務所のメンバーがいたから。「私は弁護士として、正しいと信じた道を選びます」と杏は、さくらへと宣言する。「私はもう一人ではない」、だからさくらを許すという、姉妹のラストも気持ちのいい幕の下ろし方だった。

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