神木隆之介&浜辺美波、杉咲花&若葉竜也も “ロス”を埋める朝ドラキャストの再共演
約半年にわたり、同じ俳優が同じ役を演じるNHK連続テレビ小説、通称「朝ドラ」。俳優と役の境界線が少しずつ曖昧になっていく感覚は、なかなか他の作品では味わえないものだ。必然と観る側の思い入れも強くなり、最終回後は「もうこの人が演じるこの役には会えない」という寂しさに襲われる。
そんな“ロス”を埋めてくれるのが、朝ドラ俳優同士の再共演。特に息の合った芝居を見せてくれた2人が違う作品、違う世界線で出会うと不思議な感動を覚える。
現在公開中の映画『市子』の杉咲花と若葉竜也もその例だ。杉咲と若葉は、2020年度後期放送の朝ドラ『おちょやん』で共演。杉咲は上方女優の代名詞とも言われた浪花千栄子をモデルにしたヒロインの千代、若葉は映画撮影所の助監督・小暮を演じた。千代にとって小暮は初恋の人。撮影所の大部屋女優となるも、慣れない環境下で悩む千代を温かく見守り続けた。
その後、夢に見切りをつけ、家業を継ぐことにした小暮は「一緒に来てほしい」と千代にプロポーズ。結果的に断られるが、自分の映画で千代を主役にできなかった代わりに、千代が女給として働くカフェでビール売上1位を取らせるために苦手なお酒をたらふく呑むという小暮の男前な行動が忘れられない。
そんな不器用だけど、まっすぐな優しさは若葉が『市子』で演じる長谷川にも共通する。本作は、監督の戸田彬弘が主宰する劇団チーズtheater旗揚げ公演作品で、サンモールスタジオ選定賞2015で最優秀脚本賞を受賞した『川辺市子のために』を映画化。長谷川がプロポーズした直前に失踪した恋人・市子(杉咲花)の行方を追う中で、様々な人の証言から彼女が背負った過酷な宿命が浮かび上がってくるという物語だ。
またもや若葉はプロポーズに失敗する役を演じることになったが、『おちょやん』で結ばれなかった2人が恋人役で共演する姿は観ていて感慨深い。久しぶりに杉咲の関西弁も聞くことができる。一方で、市子を演じる杉咲は、千代を演じていた頃の彼女とは別人。とある人物から“悪魔”と呼ばれたこともある市子が時折見せる背徳的な表情にこちらまで心を絡め取られそうになる。だが、長谷川の前では、“普通”の女性なのだ。安心しきった表情を浮かべる市子と、彼女に温かな眼差しを向ける長谷川との間に流れる穏やかな空気感がどこか懐かしく感じられた。
また、本作には『おちょやん』千代の弟・ヨシヲを演じた倉悠貴も、市子の最初の恋人となる宗介役で出演している。こちらも『おちょやん』とは全く異なる形での共演シーンに注目だ。さらには、『ブギウギ』ゴンベエ役の宇野祥平や股野役の森永悠希、『らんまん』聡子役の中田青渚、『ちむどんどん』金吾役の渡辺大知、『エール』ユリカ役の中村ゆり、『舞いあがれ!』山田役の大浦千佳と、近年の朝ドラで主役を支える名演を見せた役者陣が勢揃いしているため、朝ドラファンはどうかお見逃しなく。