タニグチリウイチの「2023年 年間ベストアニメTOP10」 宮﨑駿の映像表現は新たな地平へ

タニグチリウイチの「2023年アニメTOP10」

 日本はどうか。『大雪海のカイナ』が見せた表現は、長くCGアニメを作り続けてきたポリゴン・ピクチュアズのひとつの到達点としてキャラもアクションも捉えることができる。加えて世界観。巨木の上に暮らす者がいて、その裾に積もりに積もった雪の上に暮らす者もいて、出会い世界の秘密へと迫る興奮は弐瓶勉にしてはファンタスティックで、宮﨑駿感を与えてくれた。

 『カミエラビ』はそんなポリゴン・ピクチュエアズでトゥーンシェイドを確立した瀬下寛之が、ポリゴンを離れリアルさもいったん捨て、ヤン・シュヴァンクマイエルやブラザーズ・クエイらのようなアーティスティックな表現を、CGアニメの上で見せたらどうなるかに挑んだ快作。デフォルメされたキャラだからこそ浮かぶ戯画感が、殺伐とした世界観とマッチしストレートに心を刺す。

TVアニメ『カミエラビ』2024 GAME RE:START/KamiErabi GOD.app【ヨコオタロウ×じん×大久保篤×瀬下寛之】

 『ぼくのデーモン』と『陰陽師』は共にNetflix配信のアニメシリーズ。前者には日本的なキャラと物語を世界の技術力で映像化した時に現れる表現として観るべきものがあり、後者は有名すぎる夢枕獏の小説を、岡野玲子という大ヒットしたコミカライズに依らず少女漫画といった面持ちで映像化し、安倍晴明と源博雅の出会いから友情を確立するまでを描ききって、「誰に向けてアニメ化するか」という問いへの答えを示した。

 TVシリーズでは『薬屋のひとりごと』も。1クールをかけて原作の1巻を丁寧に映像化していく仕事ぶりに、アニメ化を一過性には終わらせずファンを長く喜ばせたいという意識を感じた。『転生したらスライムだった件』や『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』のように長く、原作をアニメ化し続け、共に栄えていくモデルとなってほしい。

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