『あすなろ白書』『若者のすべて』の煌めきは永遠に 木村拓哉に投影されていた作家の個性

『あすなろ白書』『若者のすべて』の煌めき

 一方、1994年に放送された『若者のすべて』(フジテレビ系)は、川崎の工場地帯で暮らす20代の若者たちの青春群像劇で、脚本は岡田惠和が担当している。本作は岡田にとっては初めてのオリジナル脚本の連続ドラマで、『ふぞろいの林檎たち』(TBS系)などの山田太一作品を彷彿とさせる泥臭いヒューマンドラマとなっていた。

『若者のすべて』©フジテレビジョン

 物語は、亡き家族の後を継ぎ、自動車整備工場の社長として働きながら妹の世話をする原島哲生(萩原将人)を中心に描かれており、医大を目指して4浪中の町医者の息子・青柳圭介(武田信治)、商社のOLと働きながら家族のために安定した結婚をしようとしている崎山薫(鈴木杏樹)、地元の信用金庫で働きながら女優を目指す水沼亮子(深津絵里)。ある事件に巻き込んで仲間の吉田守(EBI)を意識不明の植物状態にしてしまったことに対する罪悪感から、仲間たちの元を離れて生きる上田武志(木村拓哉)たちの人生に悩む姿が生々しいタッチで描かれた。

『若者のすべて』©フジテレビジョン

 1990年代の木村は、『ギフト』(フジテレビ系)や『眠れる森』(フジテレビ系)で、かつて沢田研二や松田優作が得意とした危険な香りのするアウトローの男を演じる機会が多く、武志はその走りとなる役だ。その意味で本人のイメージと合致したハマり役なのだが、完全に悪い男というわけではないのが面白い。

 例えば武志は自分に好意を寄せる村松千鶴子(遠山景織子)と同棲するのだが、2人の関係は男女の恋愛から外れたもので、どこかアイドルとファンの関係を思わせるものとなっている。このあたりの微妙な匙加減には『南くんの恋人』(テレビ朝日系)などのアイドルドラマを主戦場としてきた岡田惠和の作家性が強く現れており、今観ても新鮮だ。

『若者のすべて』©フジテレビジョン

 豪華キャスト陣の『あすなろ白書』と『若者のすべて』だが、俳優も脚本家も当時はまだ駆け出しでこれから世に羽ばたいていく存在だった。その意味でも、1990年代前半にしか成立しない青春の煌めきが刻印されたドラマで、現在の視点から観ると、その輝きはより一層眩しく感じる。

■リリース情報
『あすなろ白書』
Blu-ray BOX発売中(DVDレンタル開始中)

価格:31,020円(税込)
仕様:4枚組・本編Blu-ray4枚
本編:559分

出演:石田ひかり、筒井道隆、木村拓哉、鈴木杏樹、西島秀俊、杉山亜矢子、加賀まりこ、岩城滉一ほか
原作:柴門ふみ『あすなろ白書』(小学館『ビッグコミックスピリッツ』)
脚本:北川悦吏子
プロデュース:亀山千広
演出:木村達昭、田島大輔、新城毅彦
音楽:S.E.N.S.
主題歌:「TRUE LOVE」藤井フミヤ(ポニーキャニオン)
挿入歌:「ひとさじの勇気」峠恵子(ソニーミュージックエンタテインメント)
制作著作:フジテレビ
発売元:フジテレビジョン
販売元:ポニーキャニオン
©柴門ふみ/小学館
©フジテレビジョン

『若者のすべて』
Blu-ray BOX発売中(DVDレンタル開始中)

価格:31,020円(税込)
仕様:4枚組・本編Blu-ray4枚
本編:506分

出演:萩原聖人、木村拓哉、武田真治、鈴木杏樹、深津絵里、遠山景織子、EBI、大沢たかお、山口紗弥加、篠原涼子、川島なお美ほか
脚本:岡田惠和
プロデュース:亀山千広、杉尾敦弘
演出:中江功、木村達昭、臼井裕詞
音楽:岡崎倫典(ポニーキャニオン)
主題歌:「Tomorrow never knows」Mr.Children(トイズファクトリー)
制作:フジテレビ
発売元:フジテレビジョン
販売元:ポニーキャニオン
©フジテレビジョン

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる