『最高の教師』『ごくせん』『GTO』 「あなたの担任」は名学園ドラマの“伝家の宝刀”

名学園ドラマの“伝家の宝刀”を振り返る

 昔から“学園ドラマ”は若手俳優たちの登竜門として機能してきたわけだが、そこに教師の存在は必要不可欠だ。同じように学校を舞台にしていても、青春恋愛劇のように生徒を主体にした作品では、どうしたって描かれる生徒の数は限られてしまい、どうしたってすでに活躍している俳優が選ばれがちだ。

 対して教師を主体にしてエピソードごとに特定の生徒にフォーカスしていく作品ならば、自ずと多くの若手俳優へとスポットライトが当てられる。いわゆる“学園ドラマ”の、それも名作といわれている作品の多くは教師が主役。やがて生徒役のキャストが大成していくことで、時間をかけてその価値を高めていったものも多くある。

 現在放送されている日本テレビ系列の土曜ドラマ『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』で主人公の教師・九条里奈役を演じている松岡茉優も、“学園ドラマ”の生徒役から大成してきた俳優の1人である。土屋太鳳や北村匠海、三浦透子らを輩出した『鈴木先生』(テレビ東京系)に、片寄涼太や菊池風磨、伊藤沙莉、竜星涼、小芝風花らを輩出した2014年版の『GTO』(フジテレビ系)。そんな王道の“学園ドラマ”の生徒役だった俳優が、こうして次の世代の若手俳優たちを輩出する新たな学園ドラマで教師役に回ったというだけでもなかなか感慨深いものだ。

 卒業式の日に校舎内で教え子の誰かに突き落とされた九条が、死の直前に1年前へとタイムリープするというSF展開から幕を開けた『最高の教師』。その犯人探しもひとつの目的として片隅にありながら、あくまでも重きが置かれるのは“1年後にそうならないため”に問題だらけの3年D組を立て直していこうと、生徒のために「なんでもする」九条の姿。教師を主体に据えて30人の生徒たちと向き合っていく構造はまさしく“学園ドラマ”そのものだが、SF展開とサスペンス要素によってその定石を崩しにかかるのである。

 とはいえ先日放送された第3話のなかで登場したある台詞が、このドラマが紛れもない“学園ドラマ”であることをありありと証明していた。クラス内カーストの上位者である相楽(加藤清史郎)にこき使われることに鬱憤を感じながら、諦めを抱いて行動しない工学研究会の生徒2人(福崎那由他、萩原護)に対し、九条は「私と一緒に諦めることをやめる覚悟はありますか?」と“共犯”になることを申し出る。そして「どうして僕たちをそこまで気にするんですか?」と訊かれると、「私はあなたたちの担任教師だからです」と告げる。

 その台詞を聞いた時に真っ先に思い出したのは、同じ日本テレビ系列で20年ほど前から3シーズンにわたって放送された“学園ドラマ”の名作『ごくせん』シリーズ。そのなかで仲間由紀恵演じるヤンクミこと山口久美子は、教え子たちのピンチに駆けつけて幾度となく大立ち回りを繰り広げるわけだが、その際に敵勢に「何者だ?」と訊かれるといつも「私はその子の担任の先生だよ」と決め台詞を吐く。それまでヤンクミに反抗していた教え子たちも、その光景を見て決まって改心する。もはや学園ドラマにおける“伝家の宝刀”といえる台詞ではないか。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる