『大奥』は福士蒼汰で始まり福士蒼汰で終わる 一人二役で有功/胤篤を演じた意義
男女が逆転した江戸時代を描くNHKドラマ10『大奥』がいよいよ最終回を迎える。よしながふみの原作漫画は2008年に漫画誌『メロディ』に登場してから16年にわたり連載され、2021年まで刊行されたコミックは全19巻に及ぶ。今回の『大奥』の映像化は約10年ぶりでキャストの豪華さはもとより、原作の幕末パートの実写化は初となり、壮大なスケールで描かれる大奥の終焉がどのようなものになるのか注目される。
1月10日にスタートしたSeason1は、8代将軍・徳川吉宗(冨永愛)、3代将軍・徳川家光(堀田真由)、そして家光の三女である5代将軍・徳川綱吉(仲里依紗)の物語。男女逆転の大奥が生まれた背景にあるもの、女将軍を中心とした複雑な人間模様が描かれた。
Seazon2は、前半パートとなる「医療編」と、後半パートとなる「幕末編」の2部構成で展開されている。
そもそも、大奥の始まりは三代将軍・徳川家光の御代にまで遡る。若い男子のみに感染し、致死率80%に及ぶ赤面疱瘡の流行で、男性の数が女性の半数まで減少。赤面疱瘡による家光の死を隠蔽するため、春日局(斉藤由貴)は家光の隠し子の千恵を江戸城に連れ出した。千恵に男装させて家光を名乗らせ、世継ぎを産むことを強要する。
一方、「お万の方」こと万里小路有功(福士蒼汰)も春日局の策略により還俗させられ、家光の側室にされてしまう。徳川存続のために大奥に連れてこられた家光と有功だったが、お互いを必要とし合うようになる。ただ、家光と有功がどんなに深く愛し合っても2人の間に子はできず、ほかの側室たちとの間に女児が誕生していくのは何とも皮肉な運命。江戸城に来たばかりの頃は情緒不安定だった家光だが、有功の愛に満たされ、母としても将軍としても成長を遂げる。家光は自身が女将軍であることを明かしたうえで、有功に大奥総取締役という役職を与えている。大奥の長い歴史の中で側室から選ばれたのは有功ただ1人で、大奥総取締に就いた有功が身につけていたのが「お万好み」とされる流水紋の裃である。
『よしながふみ「大奥」を旅する』(平凡社)の、よしながふみが語る創作秘話の中で「有功は大奥の象徴で、大奥は有功で始まり有功で終わります」とある。
有功を演じた福士蒼汰はSeason1を撮影中にSeason2の準備をしている段階で、幕末パートの天璋院のオファーがあったという。福士は有功とは全く別のキャラクター、13代将軍・徳川家定(愛希れいか)の正室となる胤篤(のちの天璋院)として大奥にやって来た。
家定と胤篤の婚礼は、一橋慶喜(大東駿介)を擁立する一橋派と、14代将軍となる徳川家茂(志田彩良)の紀州派で将軍継承問題が展開中にあり、胤篤は内部から政を操るために薩摩の島津家から送り込まれている。そのため政略結婚には変わりはないが、2人は心から愛し合うようになる。