『大奥』は福士蒼汰で始まり福士蒼汰で終わる 一人二役で有功/胤篤を演じた意義
胤篤のお万の方を彷彿とさせる美貌だけでなく、包み込んでくれるような物腰のやわらかさ、おおらかな雰囲気でそばにいるだけで癒される。胤篤と一緒に散歩などするだけで家定は健やかに、朗らかになっていった。
お万の方を象徴する流水紋の裃を粋に着こなし、所作も美しい福士だが、今回のこの『大奥』で時代劇初出演だそうだ。ただ、乗馬や居合道を以前からやっていて、しっかり準備はできていたようだ。
将軍という特殊な立場になったものの、心に深い闇を抱え、何かとストレスが多く、プレッシャーと戦う女性を救うのが有功であり、胤篤の役目。将軍と強い信頼関係で結ばれ、愛を疑う環境に育った彼女に本当の愛情をも示すことができる。家定と胤篤で幸せを実感できた時間は短いものだったけれど、この実感できたことが何よりも大切な気がする。
そして、人望のある14代将軍・家茂の大奥は、前代から大奥総取締を務める瀧山(古川雄大)、家茂にとって義理の父にあたる天璋院、和宮(岸井ゆきの)、和宮の乳母・土御門(山村紅葉)が居心地のよい居場所をつくっていく。大坂城で病に倒れた家茂が「宮様に会いたい。大奥に帰りたい。親子様に会いたい」と涙を流したように、本物の家族以上に強い絆を確かめあえる場所に大奥がなっていたことにも驚きと感動がある。
天璋院こそ最後の有功であり、和宮は家光の再来として描かれ、この2人が大奥の始まりと終わりを担うことにも心が震える。家光のように、生い立ちのせいで少しひねたところがあったけれど、家光が有功と出会ったように、家茂と和宮は恋愛も友情も超えた特別な関係を築くことができた。そして、完結する大奥の物語。最後まで見届けるしかない。
■放送情報
ドラマ10『大奥』Season2
NHK総合にて、毎週火曜22:00〜22:45放送
出演:
【医療編】
鈴木杏(平賀源内)、玉置玲央(黒木)、村雨辰剛(青沼)、岡本圭人(伊兵衛)、中村蒼(徳川家斉)、蓮佛美沙子(御台・茂姫)、安達祐実(松平定信)、松下奈緒(田沼意次)、仲間由紀恵(一橋治済)
【幕末編】
古川雄大(瀧山)、愛希れいか(徳川家定)、瀧内公美(阿部正弘)、岸井ゆきの(和宮)、志田彩良(徳川家茂)、福士蒼汰(天璋院・胤篤)
原作:よしながふみ『大奥』
脚本:森下佳子
音楽:KOHTA YAMAMOTO
写真提供=NHK
©よしながふみ/白泉社