イ・ミナ×小田玲奈が考える、名作ドラマを生み出す秘訣とは? 日韓の“違い”と“共通点”
『プレイ・プリ』は「感性刺激ロマンス音楽ドラマ」
ーー話数の多い作品でも、韓国も脚本家1人で書いているんですね。では、「良い脚本」とはどんなものでしょうか。
イ・ミナ:私が考える良いシナリオとは、明確なテーマが描かれたものです。1話あたり1シーンは、その作家が意図しているテーマがきちんとインパクトのあるシーンとして描かれているシナリオですね。もちろん視聴者の好みや基準は様々ですので、その平均値を探していくのは難しいですが、明確な主題が作品に描かれていたら、時を経て光があたり、その作品の価値も認められると思っています。
小田:『ブラッシュアップライフ』の場合は、これまで私がドラマ作りでやってきたことを全部覆された作品で、それは脚本家がバカリズムさんだから、というのが大きいです。テーマはなく、設定はすごく面白いけど、どこに行き着くかわからない。それでも大丈夫だと思えたのは、脚本家のバカリズムさんが書く会話が圧倒的に面白いから。普通の女性たちがそこら辺で話していそうな話をダラダラと15分ぐらい喋っているのに、ちゃんとオチがあって、実はそれが伏線になっていて。特にエキサイティングなことも起きない、でもだからこそ愛しい「平凡な日常」をドラマでやってみたいというチャレンジに、安藤さんはじめキャストが乗っかってくれたんです。こんな脚本が書けるのは、日本ではバカリズムさんしかいないと思っています。
ーーお二方の描く女性像はどちらも非常に魅力的な作品でした。ヒロインの描き方にはどんな思いやこだわりがあるのでしょうか?
小田:それは私もイ・ミナさんに聞いてみたいことでした。『梨泰院クラス』を観たとき、コロナ禍で久しぶりに行った美容院でイソ(キム・ダミ)ちゃんの写真を見せて「こんな髪型にしたいです」と恥ずかしながら言ったくらい(笑)。わかりやすい美人じゃないのに、 ドラマを観ているとどんどんかわいく見えてくるから、そういうヒロインが良いなと、『ブラッシュアップライフ』を作り始めた頃に思っていました。
イ・ミナ:イソは原作者の意図が大きかったと思いますが、もしかしたらある種、今の時代に求められている女性像なのではないかなと思います。私も、Webtoonを読みながら、映像化しながらも、非常に共感したキャラクターでした。特に彼女のセリフは胸がすくような痛快な言葉が多くて、現実で私だったら言えないかもしれないと思うことを彼女が発してくれるので、彼女のキャラクターに入り込んで、共感をしていた記憶があります。また、韓国ドラマの女性像は、仮に奇抜で個性的な人物だとしても、恋に対しては純粋な人物像がほとんどだったと思います。イソはそういう意味でも応援され、共感されたんじゃないかなと思います。『ブラッシュアップライフ』で言うと、安藤サクラさんは本当に魅力的ですし、黒木華さんも印象的でした。
小田:『ブラッシュアップライフ』は、視聴者が「私だ」と思えるようなどこにでもいる普通の人を意識して作りましたが、私がイソちゃんに惹かれた理由は、性格は良くないけど、かわいいところ。第1話では反感を持たれて、叩かれてもいいから、だんだん好きになっちゃうような子を作りたいと思っています。例えば不倫はいけないけど、もしその子が置かれた環境で、その性格だったら、仕方ないよねと思ってしまうような、強く惹きつけられてしまうようなキャラクター。『ブラッシュアップライフ』で言うと、黒木華さんが不倫相手に対して全然しおらしくなく、毒を吐きまくる性格悪い描写のシーンで、みんながすごく気持ち良いと感じたんですね。
イ・ミナ:韓国では、これまで女性が主人公のドラマで、ビジネス的に大きな人気を博した作品はあまり多くありませんでした。そうした中、日本では『ブラッシュアップライフ』のように、女性主人公の作品が興行的にもしっかり受け止められていることがとても羨ましいですし、リスペクトを送りたいです。
ーーイ・ミナさんは、『愛の不時着』のユン・ヒョンギプロデューサーと共にHulu初のオリジナル韓国ドラマ『プレイ・プリ』を手掛けられました。プロデューサー目線での見どころを教えてください。
イ・ミナ:『プレイ・プリ』を一言で表すなら「感性刺激ロマンス音楽ドラマ」だと思います。特に、W主演のキム・ヒャンギさんとシン・ヒョンスンさんが、お互いの歌を通して歩み寄っていくシーンが表現されるところは、かなりの名シーンになっていると思います。視聴者の皆さんにはしっとりとした深い余韻が残る作品になるはずです。小田プロデューサーも新作スペシャルドラマ『侵入者たちの晩餐』(日本テレビ系)を作っているところだそうですね。
小田:はい。スペシャルドラマで、『ブラッシュアップライフ』と同じバカリズムさん脚本の作品です。今回もテーマなどは一切考えず、面白い設定から考えようと話していて(笑)。ネタバレになるのであまりお話しできませんが、家事代行サービス業で虐げられている女性が、自分を虐げている会社の社長宅に泥棒に入る話です。でも家に入ってみたら……。すみません、これ以上はネタバレになるので言えませんが、これも設定を思いついてから、『ブラッシュアップライフ』の時と同じく、後からテーマとして入れられるものを追加するスタイルで作りました。そういう順番で作っても大丈夫だと思える自信は、『ブラッシュアップライフ』の経験が土台になっています。
イ・ミナ:『侵入者たちの晩餐』も女性主人公が引っ張っていく作品になっていると伺いました。期待していますし、応援しています。
小田:私も『プレイ・プリ』はさらに音楽が見どころと伺い、ますます楽しみになりました。『プレイ・プリ』にもイソのような魅力的な女性が登場するのでしょうか?
イ・ミナ:ヒャンギさんの演じるハンジュというヒロインも魅力的ですよ。素顔を隠しながら「プリ」として趣味の弾き語り動画をSNSに投稿している女子大生です。『梨泰院クラス』のイソとは違って、思ったことや自分の夢などを言葉にするのが得意ではない女性です。映像化する過程で、その部分についてはいろいろ悩みましたが、原作より行動的で自分の言いたいことをしっかりと言うキャラクターにアレンジしています。ドラマでのハンジュの魅力は、生まれ持った個性やカラーを失うことなく、プリに変わった時に、大きなギャップを見せてくれる部分。恋愛においてはとてもピュアでかわいい姿が表現されていますので、そこにも期待してみていただければと思います。
■配信情報
Huluオリジナル『プレイ・プリ』
Huluにて独占配信中(全8話)
出演:キム・ヒャンギ、シン・ヒョンスン、ヨンオ、カン・ソンヨン、ヤン・ドングン
製作:ヘリー・アン、イ・ミナ、ユン・ヒョンギ
演出:キム・ジョンチャン
脚本:パク・ユンソン
原作:2F(イエフ)『プレイリスト』(LINEマンガにて配信中)
©HJ Holdings, Inc
公式サイト:hulu.jp/static/playplii
公式X(旧Twitter):@playpliiHulu
■放送情報
新春スペシャルドラマ『侵入者たちの晩餐』
日本テレビ系にて、2024年1月3日(水)21:00〜放送
出演:菊地凛子、吉田羊、平岩紙
脚本:バカリズム
演出:水野格
プロデューサー:小田玲奈、榊原真由子、柴田裕基(AX-ON)、鈴木香織(AX-ON)
チーフプロデューサー:三上絵里子
企画協力:マセキ芸能社
制作協力:AX-ON
製作著作:日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/shinnyusha/
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