『プレイ・プリ』は“一味違う”韓国ドラマの傑作に 淡い恋路が肯定する“本当の自分”

『プレイ・プリ』は一味違う韓ドラの傑作に

 推しの存在がもたらす喜びは、言葉では表現しきれない。憧れのアーティストやアイドル、あるいは二次元のキャラクター……日々思いを馳せる“あの人”のことが頭から離れない。こんな経験をしたことがある人も多いのではないだろうか。

 そこで、ちょっと想像してみてほしい。もし、あなたが心から愛する推しが、ある日突然目の前に姿を現したら? そんな最高のシチュエーションを叶えてくれるのが、HuluとPLAYLIST社によって制作された、Hulu初の韓国ドラマ『プレイ・プリ』だ。

『プレイ・プリ』

 『愛の不時着』と『梨泰院クラス』のプロデューサーが手掛けた本作は、LINEマンガで配信中の人気WEBマンガ『プレイリスト』を原作とし、日本のHuluと韓国最大級の動画配信サービスTVINGで配信中。韓国で注目を集める若手俳優キム・ヒャンギとシン・ヒョンスンがW主演を務める、学生と人気アイドルの秘密の恋愛を描くドラマだ。

 シン・ヒョンスンが演じる大人気アイドル「レビ」ことドグクは、キム・ヒャンギ演じる覆面女子大生シンガー「プリ」とのコラボを目指す。アイドルとしての生活に迷いを感じるドグクは、彼が本当に歌いたい音楽を探すべく「プリ」の正体を探る旅に出る。さまざまな理由はあるが、つまりドグクは“プリ推し”なのだ。

 一方で、プリの正体は、普通の大学生ハンジュ。彼女は音楽嫌いの家族から隠れてギターを弾いている。彼女はYouTubeで音楽インフルエンサーとしての人気を集めているが、その正体は誰にも内緒。しかし、悲しいことに自分の素顔を隠すハンジュは、自分の真の音楽への情熱までも隠してしまっているのだった。

『プレイ・プリ』

 まさに今の時代の、“推し文化”にぴったりの『プレイ・プリ』。しかし実は本作の最大の魅力は、「本当の気持ちを見つける」というテーマにある。素顔を隠した主人公は、『女神降臨』や『マスクガール』など韓国のWebtoonを原作としたドラマでよく見られる設定だが、『プレイ・プリ』は今までのヒット作とは一味違う。ドラマのコピー「あなたの歌声が見つけてくれた“本当の自分”」が示すように、この作品を観た視聴者の中には、ハンジュとレビと共に、心の奥底にしまってきた感情に揺さぶられることになる人もいるに違いない。

 華やかな世界に生きるドグクと、バイトをしながら学校へ通うハンジュは表面上では対照的な存在である。ところが、2人はとても似ているのだ。それは、2人が心の奥底では同じような悩みを抱えているから。『プレイ・プリ』では、そんなドグクとハンジュが、自分自身と向き合うための扉に優しく導いてくれる。この作品に溢れているのは、押し付けがましくなく、それでいて前向きになれるような自信を育むヒントなのだ。

 ドグクは「プリ」を見つけるためにハンジュに近づくが、ハンジュの真の姿を知るにつれて、自分の“本当の気持ち”に気付き始める。同様に、ハンジュもドグクがなぜ「プリ」を探しているのかという純粋な動機を知り、人気アイドルの隠された素顔に触れていく。

『プレイ・プリ』

 主人公ハンジュは、就職活動中の大学生という設定だが、これは就活で悩んだ経験のある人には特に共感を呼ぶポイントでもある。社会の「レール」から外れる恐怖、家族からの期待、そして新しい一歩を踏み出す勇気……。ドラマ内では、レビが「君も肩の荷を捨てて幸せになって」と歌うシーンがあるのだが、私たちに重くのしかかる“肩の荷”は、いつの間にか自分が本当にやりたかったことを見失わせてしまうのかもしれない。

 それにしても、甘いマスクでアイドルの仕事をしていた時とはまた打って変わった、“アーティストのレビ”がこれまたカッコいいのである。彼の柔らかく、しかしスタジオを包むように伸びていくような優しい歌声も、ドグクの音楽への愛が感じられた。

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 ハンジュは就活で訪れた一流企業での面接で、仕事についてこう答える。

「仕事はこなすものでした。だからやりたい仕事かと聞かれたら、それは違います。けれど御社を選択しました。御社は進むべき道が決まっている私にとって、最高の選択肢です」

 「プリ」の仮面を外したハンジュも、いつだって最高の選択を模索しながら生きている。それは、私たちも一緒だ。それがやりたいことではなくても、目の前に広がる毎日を精一杯生きている。だからこそ『プレイ・プリ』は、心のそこに眠る“本当のあなた”にそっと寄り添う居場所になってくれるのだろう。

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