“殺人鬼大暴れ”を期待すると物足りない!? リアルを手に入れてほしかった『怪物の木こり』

『怪物の木こり』三池崇史の優しさと厳しさ

 キャスト陣では主演の亀梨和也は少しキツめの目つきがサイコパス殺人鬼という役柄と合っていたと思うが、敢闘賞は少しずつ三池組の常連となりつつある染谷将太にあげたい。亀梨和也のサイコパス友達(?)という役柄で、良心の欠片もないサイコ野郎を安定感抜群に演じていた。実際、彼の奇行には劇場で笑いが起きていたし、最後のさりげない残虐行為は劇中屈指のショックシーンだろう。そして重要人物として登場する中村獅童も上手いもので……。思えば彼は『怪物』(2023年)でも似たような役(嫌な中年男性)を演じていた。1年に2本も「怪物」とタイトルに入っている映画に出る俳優も珍しいのではないか。

 三池崇史監督! 殺人鬼vs殺人鬼! と聞いて真っ先に思い浮かぶハイテンションなものは、残念ながらここにはなかった。また亀梨和也による、ある種の耽美的な殺人鬼大暴れを期待すると、これまた少しの物足りなさは覚えるだろう。しかし社会に居場所のない者たちのどうにもならない、そして気だるい彷徨と末路を味わいたいなら、本作はそれなりに期待に応えてくれるはずだ。もちろん、これだけの人材が集まっていたのだから、もっと思いっ切りブチ破ってリアルを手に入れる感じにしてほしかったのが正直なところだが。

■公開情報
『怪物の木こり』
全国公開中
出演:亀梨和也、菜々緒、吉岡里帆、柚希礼音、みのすけ、堀部圭亮、渋川清彦、染谷将太、中村獅童
原作:『怪物の木こり』倉井眉介(宝島社文庫)
監督:三池崇史
脚本:小岩井宏悦
音楽:遠藤浩二
主題歌:SEKAI NO OWARI「深海魚」(ユニバーサル ミュージック)
製作・配給:ワーナー・ブラザース映画
©2023「怪物の木こり」製作委員会
公式サイト:kaibutsunokikori.jp
公式X(旧Twitter):@kaibutsukikori 

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