『正義の天秤』亀梨和也の鷹野に再会できる日を願って Season2最終回までの巧みな構成

『正義の天秤2』最終回までの巧みな構成

 『正義の天秤 Season2』(NHK総合)は、主にルーム1メンバーの過去に焦点が当たってきた。Season2の最終回となる第5話では、芽依(奈緒)が担当する事件をきっかけにして、自身の知らなかった過去と向き合うこととなる。それは同時に、鷹野(亀梨和也)とも密接に関わりのある出来事だった。

 芽依が向き合うこととなるのは、幼い頃に死んでしまった母・稲森有依子の存在。そして、師団坂法律事務所の創設者であり、芽依の父・真樹夫(中村雅俊)の苦悩だ。28年前、有依子は薬物を乱用した川島鉄二に殺されていた。真樹夫に生まれたのは、憎悪。苦悩する真樹夫の姿は、南野(千葉雄大)に襲われ意識不明となった久美子(大島優子)の恋人である鷹野の境遇と重なる。

「私は正直、あなたに飛びかかって殺してやりたいと思いました」

 芽依にとっては馴染み深い特徴的な字で遺された真樹夫の手紙は、記憶の中の温厚な父とは思えない内容だった。だが、それから真樹夫は治療的司法に取り組み、川島を更生していった。初めて薬物所持で川島が捕まった際に、更生できていれば妻は死なないですんだのではないか。それは第2の犠牲者を作らないために、真樹夫にできること。弁護士としての信念、妻への愛の証だ。

 鷹野はそのことを芽依へと語りかけるが、同時に自分自身にも言い聞かせていたのではないだろうか。Season1のラストで、一生をかけて被告人の心を治療していきたいと鷹野は弁護士として法廷の場で宣言したが、一人の人間としては真樹夫と同じく南野を殺してやりたいと思っていた。面会の場で「私の命と引き換えてでも、あなたを地獄に突き落としたい」と口にしながらも、鷹野は南野の未来を信じていく。そのことが鷹野にとっての弁護士としての信念であり、久美子への愛の証なのだと。真樹夫を再登場させながら、弁護士としての魂が鷹野に継承されていることを描く、見事な脚本だ。

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