『たとえあなたを忘れても』美璃と空が“現実世界の厳しさ”に直面 ラストは“どん底”の展開に

『あな忘』が描く現実世界の厳しさ

 好きなことを追求すること。それは人生に幸福感をもたらす大切な時間だ。しかし、好きなことへの情熱だけでは生活を支えるのは難しい。そんな現実世界の厳しさが美璃(堀田真由)と空(萩原利久)の日常から垣間見えた『たとえあなたを忘れても』(ABCテレビ・テレビ朝日系)第7話。「カナヅチがカナヅチ助けようとして、2人とも溺れてもしゃーないやん」という沙菜(岡田結実)の励ましの言葉は、皮肉にもほとんど現実になってしまう。

 コンサートを成功させ、ピアノ講師に復帰した美璃は、携帯ショップでのアルバイトを辞め、レッスンの空き時間に空のキッチンカーで働き始める。「好きなことがあって、進みたい道がはっきりしている人はええね」と空の母・理佐子(檀れい)に褒められてはにかむ美璃は本当に幸せそうだった。これまでの放送を振り返ってみると、美璃の物語は、失われた「好き」の感情を取り戻す旅のようにも思えた。

 自分の想いに蓋をするように、一度手放したピアノへの“好き”をもう一度取り戻した美璃は、キッチンカーという新しい居場所で、空と一緒にいられる今を大切に見つめていこうとする。

 一方、美璃と共に生きる未来のために、ダブルワークを始める空。しかし、キッチンカーの経営は厳しく、向き合わなければならない現実は日々空を苦しめる。空は記憶を取り戻したことで、今まで感じなかった未来への不安や、また記憶を失ってしまうことへの恐怖を感じるようになっていた。

 空は保(風間俊介)に、「記憶が戻ってから、楽しいことも多いけど、苦しいことも多くなりました」と語る。この苦しみは以前は記憶がなかったから気がつかなかっただけでなく、沙菜が空の代わりに引き受けてきた“苦しみ”でもあったのかもしれない。そして他ならぬ空自身も、自分が多くの人に助けられてここまで来たことに気がついている。そう考えると、これまでとは異なる大きな一歩を、空も歩み始めているように感じた。

 そんな中、美璃の元に、以前働いていた携帯ショップの上司・森(松井玲奈)が現れる。美璃に「あなたはあれやね。ここにいた方が100倍楽しそう。どこだって、生きていく場所があればそれでええんよ」「稼ぐって綺麗事やないしね」と話す森。彼女は、愛する子どもに金銭的な苦労をさせないため、自分が日々携帯ショップで働き続けていることを明かす。森は、“好き”を仕事にしながら生きることを決めた美璃と、正反対にも思える。しかし森にとっての「生きる場所」は子どもの隣であり、愛するものを守るために現実と対峙する道もまた、彼女が選んだ生き方なのだ。

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