『たとえあなたを忘れても』“茜”畑芽育の悲しき過去が明らかに ラストに不穏な展開も

『あな忘』茜の悲しき過去が明らかに

「君の話を聞くために、僕がいるってこと、覚えておいて」

 日々の喧騒の中では時に忘れがちだが、誰もがふと立ち止まったときに感じる自分の弱さを持っている。そんな不安を癒すのは、常にそばにいて、日常の小さな話に耳を傾けてくれる人たちだ。彼らは家族であれ、恋人であれ、あるいはそれ以上の何者であれ、私たちの心の支えとなる。テレビドラマ『たとえあなたを忘れても』(ABCテレビ・テレビ朝日系)の第6話は、己の中に眠る弱さとの向き合い方を丁寧に綴っていた。

 今回のエピソードでは、茜(畑芽育)の過去が明らかに。記憶を失った茜は、母・光恵(須藤理彩)の計らいで学校を変えることになる。学校の様子を「どうだった?」と尋ねる母に対し、茜は「普通」と答える。しかし、茜が言い放った「普通」とは裏腹に、彼女は記憶喪失により自分が誰なのかがわからない状態だった。

 「何があっても茜の味方だから」と断言する母親の愛が、茜の心に深く響く一方、彼女は自分という存在に自信を持てずにいた。「けどね、まだ半分は演技してる自分がいるんだ。本当の自分は空っぽなのに、今の自分が偽物で、本物のふりをしてるみたい」と語る茜に、保(風間俊介)は「みんな、何かしら演技してるんだよ」と優しく声をかける。

 「これから茜ちゃんといるときは、ずるい考えは捨てる」と茜に誓った保は、彼女の“友達”になることを決意する。保と茜の関係は、美璃(堀田真由)と空(萩原利久)のそれとは少し異なるが、茜の恋心が秘められた“特別な友達”であることには変わらない。

 しかしある日を境に、状況は突然変わる。その日、記憶喪失前に通っていた高校の同級生から声をかけられた茜は、衝撃の事実を知ってしまう。明らかになったのは、茜の記憶喪失の原因が壮絶ないじめであり、それが原因で自殺を試みたこと。記憶を失ったきっかけを知った茜は、ショックのあまり、そのことを隠していた母親に対して怒りをぶつけ、保の診察にも足を運ばなくなる。

 自分が過去にいじめられていたという、受け入れ難い残酷な事実に直面した茜。日頃は快活さをまとい、明るい笑顔で周囲を和ませる茜だが、その内面に隠れていたのは深い傷だった。

 そして、茜が涙を浮かべながら心の内を訴えるシーンでは、畑芽育の演技がその感情の爆発を見事に表現していた。畑の目に浮かぶ涙は、茜が長い間抑え込んできた痛みと苦しみの象徴でもある。茜という1人の少女の危うい脆さを、畑はその繊細な表情と動きで見事に捉えていた。

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