『たとえあなたを忘れても』がリアルに描く幸福を手放すことの怖さ 風間俊介はハマり役に

『あな忘』が描く幸福を手放すことの怖さ

 記憶を失うとはどういうことなのか、全てがわかったわけじゃない。それでも、記憶のない“愛する人”と共に生きたい不確かな明日がある。『たとえあなたを忘れても』(ABCテレビ・テレビ朝日系)第2話は、美璃(堀田真由)が手放したくない明日のために、空(萩原利久)が抱えた“秘密”に触れる場面から始まった。美璃に“役に立たない、大切なものたち”の写真を愛おしそうに見せてくれた彼は、どこに行ってしまったのだろうか。

 記憶を失くした空にショックを受ける美璃に声をかけたのは、空のバイト仲間である藤川沙菜(岡田結実)だった。「空はあなたのこと忘れてます。そういう病気なんですよ」「あなたも空のこと、忘れた方が良いと思います」とにわかには信じがたい言葉を続ける沙菜。

 突然記憶を忘れてしまうとはどういうことなのかと混乱した美璃は、心療内科医として働くいとこの保(風間俊介)の元に足を運ぶのだった。

 そしてこの第2話の保の登場で、この「先生役」がまさに風間俊介にとって“ハマり役”であると確信した。美璃たちに比べて大人で、空の障害に関しても専門家として頼れる存在となる保。彼は美璃の幸せを願っており、彼女の味方であることは間違いない。一方で、保にはどこか他人に一線を引いているような「本音が掴みにくい」という側面もある。

 先生や従兄妹という肩書きを外したとき、この男は何を考えているのか。手にくっきりと浮かび上がる火傷の跡も、何やらワケありの予感がする。そのミステリアスな一面を丁寧に描写できるのは、立体的な人物像を描くのが得意な風間俊介ならではの特技だろう。昨年放送された木曜劇場『silent』(フジテレビ系)でも手話教室の講師役を演じていた風間。彼の演技が、「先生」という肩書きが一層強調する保の陰を最大限に引き出している。

 病院に着いた美璃は「突然、記憶失くしちゃった人とか……いる?」と記憶障害について保に尋ねてみるも、分かったのは「心的なトラウマが原因かもしれない」という漠然とした情報のみ。そんな中、美璃が音楽教室を辞めたことを知った保は、病院の「憩いの部屋」に誰も弾いていないピアノがあることを告げる。柔らかな音色が、空の病気の原因に迫る新たな出会いを運んでくることになるとは知らずに。

 ピアノの音色に誘われてやってきたのは、保の患者の1人である宮下茜(畑芽育)だ。彼女は、自分が17歳までの記憶がないことをさらりと美璃に打ち明ける。茜の登場によって、本作は美璃と空の恋愛模様だけでなく、それぞれが複雑な事情を抱えながらも、挫けずに人生を模索していく姿に勇気をもらえるようなドラマだと再認識させられる。保に恋心を抱く茜の今後はもちろん、2人を取り巻くさまざまなキャラクターたちとその関係性も楽しみなところだ。

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