『ブギウギ』六郎とツヤ、“花田鈴子”との別れ　スズ子は今後どんな自分を見つけるのか

　姉であり娘である鈴子との本格的な決別は、ツヤとの最後の面会と別れを以て行われる。あれだけ狂気に近い踊りと歌を披露したのに、大阪に帰って実家に走っていく姿は別人のように不安そうで、ようやくツヤに会えた時、急に表情が幼くなるのも、涙がとめどなく溢れるのも、趣里の底知れない演技力の賜物だ。一瞬元気になった母に早く手伝えと叱られ、嬉しそうにするスズ子。しかし、そんな時間も束の間ツヤが倒れ、彼女は最後に自分の歌を聴かせてやることにした。その歌は福来スズ子として観客に披露してきたヒット曲ではなく、子供の頃から歌ってきた「恋はやさし野辺の花よ」。掃除をしている時も、ツヤが必死に頭を下げた梅丸少女歌劇団の試験の時も、彼女はこれを歌ってきた。スズ子ではなく、鈴子としての歌で別れを告げる。

　粋な演出とともに、花田鈴子のペルソナは母の想いが受け継がれた「はな湯」に置いて東京に帰るスズ子。父・梅吉とこれから暮らすことにはなるが、彼の存在が彼女の“鈴子”を再び引き出すことができるのかは疑問である。なぜならこれまでも、彼と彼女は父と娘というより映画の脚本家、そしてスターと互いの夢を宣言し、一緒に夢を追って頑張り合うような関係だったからだ。何より、これまで育てられたスズ子が今度は梅吉の面倒を見ることになる。より、娘としてではなく一人の人間として自分の親を支えていくという新たな“覚悟”を持つことになるのではないだろうか。戦争が近づき、スズ子の舞台にも影響が出そうな予感。そんな中、彼女がどんな彼女で前を進んでいくのか気になるばかりだ。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『ブギウギ』
総合：午前8:00〜8:15、（再放送）12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K：7:30〜7:45、（再放送）11:00 〜11:15
出演：趣里、水上恒司、草彅剛、蒼井優、菊地凛子、水川あさみ、柳葉敏郎ほか
脚本：足立紳、櫻井剛
制作統括：福岡利武、櫻井壮一
プロデューサー：橋爪國臣
演出：福井充広、鈴木航、二見大輔、泉並敬眞、盆子原誠ほか
写真提供＝NHK