『薬屋のひとりごと』のヒットは“必然”だった? 確かな実力者たちが揃った信頼の制作陣

『薬屋のひとりごと』ヒットは必然だった?

 本作の監督を務める長沼範裕は、『魔法使いの嫁』第1期(2017年)と、TVシリーズに先行して発表されたOVA版(2016年)で実力の程は周知されていた演出力で、毒見役の猫猫が、ただならぬ少女である点をPV冒頭の掴みから提示した絵コンテは見事というほかない。若い武官の李白を外出の身元保証人にすべく、猫猫が高級妓楼「緑青館」の売れっ子を交渉材料に使う第7話のやり取りは、動揺を隠せない李白の姿が笑いを誘う。

『薬屋のひとりごと』第7話「里帰り」予告

 PVの頃から一貫してキャラクターデザインを担当する中谷友紀子は、『Go!プリンセスプリキュア』(2015年)、『トロピカル〜ジュ!プリキュア』(2021年)と、プリキュアシリーズ2作品のキャラクターデザインで、柔らかい線の美少女を紡ぎ出してきたアニメーターだ。猫猫を含む女官の少女らの愛らしさに加え、玉葉や梨花など後宮内の上級妃たち気品ある大人の女性も描き方が上手い。現在までの放送話数すべてに総作画監督としてかかわり、画面のクオリティを保っている。衰弱した病床の梨花妃が、げっそりと痩せ細った外見から、元の艶っぽく気品のある姿に戻って行く第6話のモンタージュは特に秀逸だ。

 猫猫を気に入って侍女に迎えた玉葉妃、命を助けてもらったことで猫猫に恩を感じている梨花妃、猫猫の卓越した判断力と薬学の知識を見出した宦官の壬氏など、主人公を取り巻く大人たちは個性豊かな美形揃い。キャラクターだけでなく、中国そっくりの舞台周りの美術も、異世界ファンタジーアニメが溢れている深夜枠の中では非常に新鮮に映る。

 『The Apothecary Diaries』のタイトルで海外ファンにも親しまれている本作は、アメリカにおける2023年秋アニメの人気ランキング11月集計分で『葬送のフリーレン』に迫る勢いで上昇しており(※1)、作品ジャンルで2位、女性キャラのジャンルでMAOMAO(猫猫)が3位にチャートイン(11月19日時点※2)。ちなみに作品1位は『葬送のフリーレン』、3位は『SPY×FAMILY』で、女性キャラの1~2位は『葬送のフリーレン』のフリーレンとフェルンだ。『薬屋のひとりごと』が、並み居る強豪に引けを取らない魅力を放ち、海外のアニメファンにも刺さっている何よりの証拠といえるだろう。現在のクオリティで無事に半年間、2クールを全力で走りぬいて欲しい作品だ。

参照

※1. https://anitrendz.com/charts/top-anime/2023-11-19
※2. https://anitrendz.com/charts/female-characters

■放送情報
『薬屋のひとりごと』
日本テレビ系にて、毎週土曜24:55〜放送
各種配信プラットフォームにて、放送終了後順次配信
キャスト:悠木碧、大塚剛央、小西克幸、種﨑敦美、石川由依、木野日菜、甲斐田裕子、潘めぐみ、小清水亜美、七海ひろき、斉藤貴美子、家中宏、赤羽根健治、久野美咲、かぬか光明
ナレーション:島本須美
原作:日向夏(ヒーロー文庫/イマジカインフォス刊)
キャラクター原案:しのとうこ
監督・シリーズ構成:長沼範裕
副監督:筆坂明規
キャラクターデザイン:中谷友紀子
色彩設計:相田美里
美術監督:髙尾克己
CGIディレクター:永井有
撮影監督:石黒瑠美
編集:今井大介
音響監督:はたしょう二
音楽:神前暁、Kevin Penkin、桶狭間ありさ
アニメーション制作:TOHO animation STUDIO、OLM
製作:「薬屋のひとりごと」製作委員会
©日向夏・イマジカインフォス/「薬屋のひとりごと」製作委員会
公式サイト:kusuriyanohitorigoto.jp
公式X(旧Twitter):@kusuriya_PR

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