『葬送のフリーレン』は切ないだけじゃない! “人類vs魔族”バトルアニメとしての面白さ
※本稿はアニメ『葬送のフリーレン』最新話の内容に触れています。ネタバレにご注意ください。
放送開始以来、「切ない」「泣ける」といった感想が目立っていた異世界ファンタジーアニメ『葬送のフリーレン』。実際に劇中では、長命のエルフを主人公としたエモーショナルな物語が描かれてきた。しかしここ最近の展開によって、手に汗握る“バトルもの”としての魅力が開花しつつあるようだ。
同作はかつて魔王を討伐した勇者一行の魔法使い・フリーレンが、「人間を知る」という目的のためにふたたび旅に出る物語。序盤のエピソードでは、1000年以上生きてきたエルフのフリーレンと、短い人生を送る人間との対比をテーマとした話が描かれていた。
だが第7話から始まった「断頭台のアウラ編」では、魔王直属の“七崩賢”のひとり・アウラと、その直属の配下である“首切り役人”たちを相手取った戦闘に突入。一転してバトルアニメとしての盛り上がりを見せている。
第8話では、フリーレンが魔力の糸を操る魔族・ドラートの襲撃を受けるも、実戦経験の差から圧倒。そして彼女が歴史上でもっとも多くの魔族を葬り去ってきたことから、“葬送のフリーレン”と呼ばれていることが明らかになった。
続く第9話では、フェルンとシュタルクが血を操る魔法<バルテーリエ>の使い手であるリュグナー、模倣する魔法<エアファーゼン>の使い手であるリーニエと正面衝突。ダイナミックな作画によるバトルシーンが繰り広げられた。
ただ、一連の戦闘が盛り上がったのは必ずしも作画の力だけではない。むしろ視聴者の興味をそそる設定が次々と開示され、作品がバトルものとしての深みを増していったことの影響が大きいのではないだろうか。
これまでの戦闘では、フリーレン一行が魔物を一蹴するだけの描写が多かったが、「断頭台のアウラ編」で対峙したのは知性を有する強力な魔法使いたち。同じ土俵での対決ということもあり、あらためてフリーレンたちの実力が示される結果となっている。シュタルクがリーニエの斧を腹筋で受け止めたり、フェルンが“一般攻撃魔法”のみでリュグナーとの魔法対決に完勝したりするシーンは、そのいい例だろう。
さらにここ最近の展開で浮かび上がってきたのが、「自分たちよりも強い魔族をどうやって倒すのか」というテーマだ。
魔族は長い寿命をもっており、魔法の研究に日々を費やしている上、人の心を持たずに相手を蹂躙することができる。言ってしまえば、生まれながらの戦闘民族であり、ほかの種族よりも戦闘に特化した存在と言えるだろう。フリーレンがアウラの魔法に対して、「人類の魔法技術では想像もつかないほどの高み」という言葉を放っていたことも印象深い。