『大奥』瀧内公美の心から溢れ出た“ありがとう” 正弘の愛情で“翼”を手に入れた家定
血の繋がりはなくとも、人は人を愛することができる。言葉にすれば、綺麗事に思えるこの事実が、徳川家定(愛希れいか)、阿部正弘(瀧内公美)、瀧山(古川雄大)の互いに向ける眼差しによって立証されたNHKドラマ10『大奥』第17話。3人の尊い関係を少しでも長く見守っていたかったが、無慈悲にもその時は唐突に訪れた。
開国を迫るアメリカからの親書を公にして、諸大名や学者たちから広く意見を求めた正弘。最終的に幕府は勝義邦(味方良介)の意見を採用し、さしあたり下田と函館の2港を開くこととなった。正弘はアメリカがさらなる通商条約を求めてくるのを見込み、引き続き国中から英知を集めるが、当然それをよく思わない者もいる。実際に一連の流れで日本は開国派と攘夷派で意見が真っ二つに分かれており、老中の井伊直弼(津田健次郎)は幕政の混乱を生んだとして正弘に老中職辞任を求めた。だが、正弘はそれを拒み、井伊にこう告げる。
「私はこの困難に立ち向かっていける新たな仕組みを作ろうとしているのです!」
正弘が構想している“新たな仕組み”。それは、身分の差や立場の違いを超え、皆で英知を持ち寄って西洋にも負けない国を作るという前例のない仕組みだ。そこに正弘が至るまでに大きな影響を与えたのが、一つに瀧山との出会いだろう。母親が罪人ゆえに身を売るしか生きる術がなく、狭い世界に追いやられてもなお、向上心を失わず知力を磨き続けていた瀧山。大奥入りを果たしてからも他の男たちを束ね、ともに忠義を持って家定に尽くす彼の姿は「才能はどこに眠っているかわからない」という知見を正弘に与えてくれた。
そしてもう一つ、正弘が理想的なこの国の未来を見出したのが家定と胤篤(福士蒼汰)の仲睦まじい夫婦の姿である。元々は幕政を内部から操るために薩摩から送り込まれてきた胤篤。最初は家定も敵を迎え撃つような心持ちでいたが、“お万の方の再来”と呼ばれる外見の美しさのみならず、薩摩の郷中教育を受けた彼の聡明さや穏やかな内面を知るにつれ少しずつ警戒心を解いていった。