孫悟空、ドラえもん、ルパン三世らが“歳を取らない”からこその苦悩 声優の交代を考える

長寿アニメ、「声優交代」の難しさ
【キャラクターPV:ルパン三世&次元大介】シリーズ最新作『ルパン三世 PART6』2021年10月9日(土)24時55分より日本テレビ他全国放送中!│"LUPIN THE THIRD:PART 6"

 近年の声優交代で印象深かったのは『ルパン三世』の次元大介役だろう。アニメ化50周年という節目に制作された『ルパン三世 PART6』(2021年)で、テレビアニメ化以前のパイロットフィルムから一貫して次元大介を演じていた小林清志が勇退を表明。放送第1回目のエピソード0(ゼロ)にのみ次元役で出演したが、いくら時代が変わろうとも、変わらない良い物もあるという、粋なメッセージを絡ませた好編で小林の花道を飾った。後任の大塚明夫にインタビューを行ったが、「清志さんの芝居をトレースして行くだけ。自分の色は出さないでやっています」と、小林へのリスペクトを込めて次元大介を演じているとのこと。2010年放送のテレビスペシャル『ルパン三世 the Last Job』を最後に、1977年からのキャスト大半が降板した中、唯一続投していた小林だけに、ファンにとっても感慨深い出来事だった。

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 ギネスブックに載っているほどの長寿アニメ『サザエさん』は、カツオ役の高橋和枝、波平役の永井一郎ほか、声優の急逝に伴って突然の交代が起きた事例もあるが(そもそもカツオは高橋和枝でさえ2代目キャストだ)、50年以上の放送期間中に徐々に声優の交代を行ない、視聴者に大きな混乱をきたさないまま緩やかな引継ぎが進んだ例と言える。

 2023年10月末には、カツオの友人の花沢さん役の交代が発表された。長年演じてきた山本圭子から、『ケロロ軍曹』でお馴染みの渡辺久美子に引き継がれる。山本の降板理由については制作サイドが言及していないが、アニメがまだ”テレビまんが”と呼ばれていた時代から少年役を中心に活躍しており、いまや80歳という年齢を考えれば無理からぬことだ。今や1969年の放送開始以来、現役で残っているレギュラーはサザエ役の加藤みどり1人である。こうした番組全体規模でキャストのほとんどが入れ替わる交代劇があるケース以外にも、病気や引退、一時休業などが原因で役を降りた声優の代わりに、後任者が務める個人レベルの交代劇は、枚挙に暇がない。

 『ルパン三世』にせよ『ドラえもん』にせよ、10年以上もの長きにわたって親しまれたキャラクターの声が変わると抵抗があるものだが、絵に描かれた2次元キャラが歳を取らないのに対し、長く続くほどに役者が高齢化して行くのは避けられない。どのあたりで交代の決断を下すのかは制作サイドの難題であるが、長寿アニメほど、そういったジレンマを抱えながら放送が続いている。大切なのは新キャストをどうやって自分の中に受け入れ、馴染ませてゆくかという視聴者側の目線と受け止め方だろう。

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