孫悟空、ドラえもん、ルパン三世らが“歳を取らない”からこその苦悩 声優の交代を考える

長寿アニメ、「声優交代」の難しさ

 10月13日に、劇場用アニメ『ドラゴンボールDAIMA』の制作発表が各媒体で報じられた。公開は2024年秋とのことで、この新作映画の発表に際して、声優の野沢雅子が「ぜひご期待くださいね!」とコメントを寄せている。鳥山明原作のアニメ『ドラゴンボール』は、1986年に最初のテレビシリーズが始まり、その後も断続的にテレビアニメと劇場用アニメが交互に制作されているが、主人公・孫悟空の声は37年間ずっと野沢が演じ続けている。

新作アニメ『ドラゴンボールDAIMA』2024年秋放送 悟空たちが小さくなったティザー映像も

『DRAGON BALL』40周年記念作品となる完全新作アニメシリーズ『ドラゴンボールDAIMA』が2024年秋に放送されること…

アニメシリーズ「ドラゴンボールDAIMA」 ティザー映像 / 2024年秋 展開決定!

 今や日本だけに留まらず、世界各国のファンにも「悟空の声は野沢さん」というイメージが強く、新作『ドラゴンボールDAIMA』への続投も確実だろう。87歳の現役声優であり、バイタリティのある声は流石と言うべきだ。とはいえ、どんなアニメ作品に於いても、永遠に声優の交代がないわけではない。ここで少々、過去の事例から声優の交代劇について考えてみたい。

 『ドラゴンボール』同様、東映アニメーション制作の長寿シリーズで度々声優が変わっているのが『ゲゲゲの鬼太郎』。これは新シリーズ制作の度にスタッフとキャストを毎回一新しているために起こることだが、初期2シリーズ(1968年~1971年)にわたって鬼太郎を演じた野沢雅子が、その後も恐怖色の濃い別作品『墓場鬼太郎』(2008年)や、『映画 妖怪ウォッチ シャドウサイド 鬼王の復活』(2017年)のコラボ企画で度々鬼太郎役に復帰しているのは、それだけ同キャラクターの声として認知されているからだろう。

 沢城みゆきが鬼太郎を演じたテレビ第6シリーズでは、他界した田の中勇に代わって野沢が目玉おやじ役を引き継いでおり、声優の交代が上手い具合に働いている印象だ。余談だがテレビ第5シリーズ放送中に公開された『劇場版 ゲゲゲの鬼太郎 日本爆裂!!』(2008年)には、歴代5作品の鬼太郎たちが一堂に集まるメタ的なお遊び短編『ゲゲゲまつりだ!!五大鬼太郎』が併映された。声優の交代、キャラクターデザインの変更がある長寿作品の事情を利用した楽しい一編なので、機会があればDVDでご覧いただきたい。

『映画ドラえもん のび太の地球交響楽』特報【2024年3月1日公開】

 声優の交代は多くの場合、前任者の突然の他界という事情から行なわれるわけだが、長く演じた前任者が勇退したことで存命中にバトンタッチされるケースもある。その代表格がシンエイ動画制作の『ドラえもん』だろう。

 テレビアニメ『ドラえもん』は1979年の放送開始以来、ドラえもん役の大山のぶ代を始めとした声優5名が26年の長きにわたって番組を務めていたが、大山が病気を理由に降板の申し出をしていたことと、声優陣の高齢化もあり2005年にレギュラーの総入れ替えが行なわれた。大山のドラえもんに長年親しんだ世代は、新キャストをなかなか受け入れられず批判的な意見も多かった。後任の水田わさびと、のび太役の大原めぐみの耳にもバッシングの声が届き、辛い時代があったとのことだが、『映画ドラえもん のび太の宇宙英雄記』公開時に開催された「ドラえもん映画祭2015」で素晴らしい出来事があった。

 持ち役を降板して10年を経た小原乃梨子(のび太役)と野村道子(しずか役)が舞台挨拶に駆け付け、水田と大原に「新しいものをやるときは、前の方が良かったという洗礼を受ける。だけど10年続けられれば本物」とエールを送ったことで、2人が壇上で号泣した逸話がある。

 『ドラえもん』と同じくシンエイ動画が制作する『クレヨンしんちゃん』もまた、野原しんのすけ役を26年以上も演じてきた矢島晶子が、「しんのすけの声を保ち続けることが難しくなった」と降板を申し出たため、声優の交代があった。後任の小林由美子は、矢島が演じていた声のトーンに寄せる芝居で2018年より番組を引き継ぎ、『映画 クレヨンしんちゃん』シリーズもすでに5作品で主演している。

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