『いちばんすきな花』椿が“無個性のいい人”となった理由 言葉数増える松下洸平が愛おしい
しかし、ひょんなことから椿の家に集まった紅葉(神尾楓珠)、ゆくえ(多部未華子)、夜々(今田美桜)は、賞味期限切れのコンビニおにぎりを、何も気にせず頬張る。それがさも“当然”かのような顔をして。そんな3人に驚きながらも、椿は嬉しかったのかもしれない。自分が隠してきた感情が、当たり前のように通じるこの関係性に。
だからこそ、これまでの椿ならしなかったであろう、いわば賞味期限ギリギリのブーケを元婚約者である純恋(臼田あさ美)にあげたのかもしれない。でも、純恋は自宅に持ち帰って枯れるまで愛でることはしない。それが純恋のらしいところでもあり、椿とはこの先もずっとわかり合うことはないことを象徴しているようでもあった。
純恋には「意味わかんない」と言われてしまうことも、紅葉、ゆくえ、夜々の前では素直に話せる。このメンバーなら「明日には枯れる花」も心ゆくまで飾ることもできるはずだ。その枯れゆくさまを見て思ったことを、それぞれに語り合える場面まで想像できる。そんな心地よい椿の家を、彼らは「お花の匂いがする部室」と例えた。
「約束しなくても誰かしらがいる安心感があって、でも1人ならそれはそれでラッキー」とは“部室”と名付けた夜々の言葉。「1人でもラッキー」と思えるのは、いずれ誰かが来ることがわかっているから。その1人の時間が、束の間の1人だと信じられるから。それは、椿が3人を送り出したあとに感じる「不思議と自分はもう1人にならないって感覚になるんですよね。1人で大丈夫って思える感じ」ということなのだろう。
「1人で大丈夫って思えるのは、1人じゃないってわかったときなんだな」と話す椿に、胸が締め付けられるような気持ちになった。これまでの椿の「1人で大丈夫」は誰にも心を開かずにいるためのおまじないのような言葉だった。でも今の椿の「1人で大丈夫」は4人組の繋がりを信じられる喜びを噛みしめる言葉だ。どんどん言葉数が増えていく椿が愛しいし、それを自然と受け入れている3人もまた微笑ましい。
おそらく今後、椿のようにそれぞれの心が一つずつ開かれていく様子が描かれていくのだろう。その過程で、彼らが飲み込んできた多くの言葉にハッとさせられるに違いない。4人じゃないと話せない話、4人だからこそ聞ききたい話が、「お花の匂いがする部室」で紡がれるのを楽しみにしている。
■放送情報
木曜劇場『いちばんすきな花』
フジテレビ系にて、毎週木曜22:00~22:54放送
出演:多部未華子、松下洸平、神尾楓珠、今田美桜、齋藤飛鳥、白鳥玉季、黒川想矢、田辺桃子、泉澤祐希、臼田あさ美、仲野太賀ほか
脚本:生方美久
プロデュース:村瀬健
演出:髙野舞
音楽:得田真裕
主題歌:藤井風「花」(HEHN RECORDS / UNIVERSAL SIGMA)
制作・著作:フジテレビ
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