韓ドラ要素全部入り! 韓国で社会現象になった傑作『ペントハウス』シーズン1を徹底解説
韓国で2020年から2021年にかけて放送され、社会現象を巻き起こした韓国マクチャンドラマの王者『ペントハウス』。ドロドロ愛憎ドラマ=マクチャンドラマの頂点に君臨する衝撃作品で、想像を超える過激な展開に中毒になる人が続出した。瞬間最高視聴率31.1%という驚異的な記録をたたき出した本作は、韓国で大旋風を巻き起こし「観ていない人を探すのが大変なほど人気」と言わしめる超人気作品だ(『ペントハウスSP〜隠された物語』より)。
そんな社会現象となったサスペンスドラマ『ペントハウス』のシーズン2が、10月から各動画配信サービスで見放題配信がスタートした。さらに、『ペントハウス』の監督チュ・ドンミンと脚本家のキム・スノクが再タッグを組み、オム・ギジュン、ユン・ジョンフン、シン・ウンギョンら俳優陣も再集結した『ペントハウス』制作陣による新ドラマ『7人の脱出』が10月2日より本国で放送開始するなど、『ペントハウス』熱が再燃している。マクチャンドラマの頂点に君臨する『ペントハウス』という衝撃作品は、なぜこんなにも人の心を掴むのか。本記事では「伝説の始まり」である『ペントハウス』シーズン1を深堀りしてご紹介したい。
本作は、100階建て超高級タワマン「ヘラパレス」に住む、超富裕層たちの闇を描いたサスペンスドラマだ。韓国の社会問題を背景に、貧富の格差、学校暴力、受験戦争、家庭内暴力、と韓国社会を風刺した内容が盛り込まれている。物語は、学校で繰り返される胸の悪くなるようないじめをする子供たちと、欲望渦巻くその親たちが繰り広げる、教育戦争に不幸な結婚と、愛憎のもつれ、不倫、裏切り、出生の秘密、不動産売買、違法投機ビジネス、殺人と、ありとあらゆる闇の詰め合わせの「韓ドラ要素全部入り」のストーリーで、全員狂気に満ちた登場人物たちの行動は、呆気に取られて目が離せなくなる。
さらに、物語を盛り上げる大迫力の音楽に、豪華絢爛なセットや小道具、衣装(悪と善の対比で白や黒が特徴的に使われていたり、欲望を表すために赤が使われていたりする)、そしてキャストたちの鬼気迫る怪演は、これまでに観たことのないような衝撃を我々に与え、迫力のある世界に否応なく入り込ませる。本作の世界に一歩足を踏み入れたら最後、中毒性のある想像を超える衝撃の展開からいっときも目が離せなくなるのは間違いない。
本作では、5家族が尽きぬ欲望を巡って争いを起こしていくのだが、貧富の格差を描く最たるものとして、5家族が暮らす超高級タワマン「ヘラパレス」での居住階でのヒエラルキーが分かりやすく描かれる。上層階になるほどグレードが高く、裕福さを表している。最上階のペントハウスに住むのは、JKINGホールディングス会長チュ・ダンテ(オム・ギジュン)、シム・スリョン(イ・ジア)夫婦と、双子の子供であるソクフン(キム・ヨンデ)、ソッキョン(ハン・ジヒョン)一家だ。
韓国社会でのヒエラルキートップのダンテは、不動産ビジネスで成功し、ペントハウスで優雅な暮らしをしながらも、ヘラパレスの富裕層だけが入れるクラブ「ヘラクラブ」の会長をしている。ダンテはサイコパスで、欲望にまみれる冷酷非情な人間。子供たちを虐待し、妻のスリョンを裏切り、ヘラパレスの住人であるチョンア財団理事長で、ソプラノ歌手のチョン・ソジン(キム・ソヨン)と不倫をしていた。
ダンテと不倫をしているソジンは、芸術高校の同級生オ・ユニ(ユジン)と、声楽のライバル関係にあり、ユニの喉をトロフィーで傷つけるという過去を持っていた。さらに、ユニの恋人であった医学生のハ・ユンチョル(ユン・ジョンフン)を奪って略奪婚をしていた。しかし、現在医師となったユンチョルには愛されず、愛を求めてダンテとの不倫にのめり込んでいた。本作で視聴者の心をもっとも掴んだのは、このソジン役のキム・ソヨンの鬼気迫る圧巻の迫力ある演技の数々だろう。目を見開き、人を叩き、喚き罵り、涙する気迫に圧倒される。
キム・ソヨンが演じたソジンは、財団の理事長である親から厳しくしつけられ、常に妹と比較され劣等感と恐怖に支配されて育ち、善悪の判断が歪んだ欲の権化として描かれている。常に自分が一番でないと気がすまない自己顕示欲の強いソジンの狂気と暴走が、物語をあらぬ方向へと進展させていく。本作の演技で、キム・ソヨンは2020年のSBS演技大賞で最優秀演技賞を受賞、続くシリーズで2021年の第57回百想芸術大賞TV部門最優秀女優賞を受賞している。