『ゆりあ先生の赤い糸』菅野美穂の“爆発する芝居”が再び 奇妙な共同生活の物語が幕開け
菅野美穂が主演を務めるドラマ『ゆりあ先生の赤い糸』(テレビ朝日系)が10月19日にスタートした。
局は違うものの、女性が一家の大黒柱として奮闘するドラマが10月18日、19日と2日連続で始まっている。『コタツがない家』(日本テレビ系)と『ゆりあ先生の赤い糸』。主婦という共通軸がありながら、そこに絡みつくさまざまな問題、作品全体のムードは対照的だ。前者は深堀万里江(小池栄子)が漫画家廃業寸前の夫、アイドル志望の不登校息子、熟年離婚をした独り身の父というダメ男3人を抱えながら、新しい家族の形を探していくホームコメディ。一方の『ゆりあ先生の赤い糸』は、伊沢ゆりあ(菅野美穂)が夫の介護に、愛人の存在、嫁姑問題とまた違った角度からの問題を乗り越えていくヒューマンドラマだ。
意識不明の要介護状態となった夫の吾良(田中哲司)、その吾良と愛人関係にある彼氏の箭内稟久(鈴鹿央士)、自分の感情が最優先で吾良の介護に協力的ではない義母の伊沢節子(三田佳子)と義妹の伊沢志生里(宮澤エマ)という頼る先がない独りのゆりあ。夜中に節子が熱を出してしまい、吾良の面倒も見ないといけないというキャパオーバーを起こしたゆりあは、開かずにしていた吾良の携帯から「りっくん」=「箭内稟久」を見つけ出し、家へと呼びつける。
これは2021年に公開された映画『明日の食卓』でも思ったことだが、シチュエーションや感情こそ違えど、溜まりに溜まった鬱憤が爆発する芝居が菅野美穂は上手い。藁にもすがる思いで電話をかけた稟久にまで、「理由もなくこんな時間にはちょっと……」とやんわりと断られてしまい、ゆりあは「あなた吾良は……愛してんでしょ? じゃあ、来いよ!」と怒りと本音が漏れ出る。「具合が悪くてセックスもできない吾良には用なしですか。だとしたら、そんなもん不倫以下のクソままごとだ」という暴言に、稟久も黙ってはいない。
伊沢家の玄関で稟久がぶちまけるのは、ゆりあが知らない夫の顔だ。吾良が語っていたゆりあの人柄は「大きい人」。変なことをすると怒るけどあとは飲み込んでくれてるという吾良の言葉とは裏腹に、稟久の目の前にいるのは憤りを露わにしたゆりあ。「説教好きの普通のおばさん」という、暴言には暴言で稟久はゆりあへと意志を示すのだ。