キム・ナムギルファン必見! 『剣の詩』の激しいアクションと美しい音楽に心奪われる

『剣の詩』はキム・ナムギルファン必見!

 Netflixで韓国ドラマ『剣の詩』(全9話)が、一挙配信スタートした。本作は1920年代、満州にあった朝鮮民族の居住地・間島(カンド)を舞台にしたアクション活劇。盗賊団の頭、イ・ユン(キム・ナムギル)が、住むところや家族を奪われた人たちを守るために日本軍や馬賊と戦うさまを描く。

 馬に乗って荒野を突っ切っていく場面が数多く描かれ、韓国ドラマにしては珍しい西部劇色の強い作品だ。日本の占領下にあった朝鮮半島のリアルな様子に胸がつぶれる思いもあるが、激しいアクションシーンとそれを彩る美しい音楽に心を奪われる。

 今回は、本作で主演を務めるキム・ナムギルの魅力に徹底的に迫り、共演者との相乗効果についても言及したい。(以下、ネタバレあり)

キム・ナムギルが最強すぎる! 銃さばきに惚れ惚れ

 まず、キム・ナムギルが演じるイ・ユンのバックグラウンドについて少し説明しよう。

 かつてユンは奴婢として、元両班で現在は日本軍の少佐となったイ・グァンイル(イ・ヒョヌク)に仕えていた。朝鮮半島が日本の統治下になったことで身分制度が廃止となり、ユンは奴婢の身分から解放され、グァンイルとともに日本軍の兵士として活動していた。

 しかし1909年の南韓大討伐作戦で多くの朝鮮人が殺され、まさに作戦の現場にいたユンは、日本軍の軍人として活動することに疑問を抱くようになる。それから6年間、ユンは酒浸りの生活を送るのだが、1915年に南韓大討伐作戦で家族を殺されたチェ・チュンス(ユ・ジェミョン)を訪ねたことで、ユンの運命が大きく動き出す。

 ナムギルが演じるユンは、南韓大討伐作戦で心に深い傷を負った人物で、第1話の前半は生きる気力が全く見られない哀れな男性として描かれている。しかし間島(カンド)に住むチュンスを訪ねる道すがら、日本軍だけでなく同胞からも殺され続ける朝鮮人の無残な現実を目の当たりにし、ユンの心境に変化が見られる。そしてチュンスが住む村が、無法者の馬賊に襲われたことをきっかけに、痛めつけられる朝鮮人を守るために立ち上がることを決意する。

 第1話前半と後半のユンの変化に目を奪われる。無気力で力のない目をしていたユンが生きる目的を見出してからの覚醒ぶりがすごいのだ。チュンスが住む村を襲った馬賊の陣営に一人で乗り込み、激しい銃撃戦とアクションを見せるシーンでは、長い銃をクルクルまわすユンの銃さばきに惚れ惚れしてしまう。

 そしてユンはとにかく強い。銃を撃ちながら、長い手足を駆使して敵をなぎ倒す姿は、アクションシーンに定評があるナムギルの大きな見せ場となる。筆者は血が吹き飛び、首が吹っ飛ぶ描写がとても苦手なのだが、それ以上にナムギルのアクションは画面から目が離せなくなる魅力があった。

 1915年にチュンスと会ってから5年後の1920年、盗賊団の頭となったユン。全9話の中で何度も死に直面するシーンに出くわすが、どうやって乗り越えていくのか、そのたくましい生きざまをしかと見届けてほしい。

“因縁の相手”イ・ヒョヌクとの対比が美しい

 ユンがかつて仕えていたイ・グァンイルを演じるのがイ・ヒョヌクだ。ヒョヌクといえば『Mine』で財閥の息子、『再婚ゲーム』で会社社長を演じるなど、セレブ役が似合う俳優の印象がある。

 今回も元両班という役どころなので、セレブであることは間違いない。しかし長いものに巻かれる精神で親日家となり、日本軍の軍人として「三浦正平」を名乗り忠誠を誓う。しかし日本人の上官から「しょせんは朝鮮人」とバカにされ、ストレスを抱えているようだ。

 大きな成果を上げなければ、日本軍の軍人として認められないグァンイルは、何かにとりつかれたように、同胞の朝鮮人を殺し続ける。それは認めてもらいたいという気持ちだけでなく、引き留めたのに自分のもとを去っていったユンへの当てつけのようにも見えるのだ。

 ユンとグァンイルの悪縁は物語の最初から最後まで続くが、ナムギルとヒョヌクの相乗効果は思っていた以上のものがあった。ハードボイルドな雰囲気を持つナムギルとノーブルな雰囲気のヒョヌクが銃を手に向き合う姿が、なんと絵になることか! 

 そしてユンとグァンイルはお互いに憎み合いながらも、憎み切れない複雑な感情があることも明らかになっている。不幸な時代に生まれてしまった2人の悲しい運命にやるせない気持ちでいっぱいになるだろう。

『梨泰院クラス』ユ・ジェミョンが主人公の恩師役に

 ユンの人生を変えるきっかけとなったチェ・チュンスを演じるのが、『梨泰院クラス』の敵役としておなじみのユ・ジェミョンだ。

 ジェミョンが演じるチュンスは義兵長出身で、弓と環刀を武器に戦い、特に弓は百発百中を誇る腕前を持つ。ユンが関わった南韓大討伐作戦で、家族や同志を失う悲しみを味わったが、謝罪に訪れたユンに対して生きる意味と背負うべき使命を説いた恩人のような存在だ。

 2人が語り合う場面はいろいろあるが、中でも朝鮮の国全体を見下ろせるオランケ峠のシーンが味わい深い。故郷を想いもっと景色を目に焼き付けておけばよかったと後悔するチュンスに、ユンも密かに恋心を抱いているナム・ヒシン(ソヒョン)への想いをとつとつと語る。寡黙なユンが、自身の想い人のことを口にすることから、いかにチュンスを信頼しているかが分かる。

 銃を持つユンと弓を持つチュンスのツーショットは、それだけで敵を倒せるのではないかと思わせる迫力あるオーラが漂う。ナムギルの大人の男性の魅力をより深く引き出しているのが、ジェミョンの存在なのだ。

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